学校・チーム

【東筑】考えさせる大人の野球を実践。日本一短い練習で、日本一強いチームに

2018.9.14

昨年発売した『甲子園を目指せ!進学校野球部の勝利への方程式』に続き、今年も『甲子園を目指せ! 進学校野球部の奮闘の軌跡』が辰巳出版より発売!
取材した高校の中から、福岡県立東筑高校野球部(福岡)の本書掲載内容の一部を紹介します。


「甲子園を目指せ! 進学校野球部の奮闘の軌跡」福岡県立東筑高校 編



すべては1本の道につながっているーー
野球と勉強、どちらも絶対にあきらめない! (本書より)


怒鳴らない、強制しない、決めつけない。将来を見据えた指導で選手を伸ばす。「生徒は勉強を一番に頑張って欲しい」の真意とは?

「日本一短い練習で、日本一強いチームを作る」より

「ああ、やっぱりそうなんだな……」と、青野浩彦監督が大笑いしたエピソードがある。2018年2月。2季連続甲子園となるセンバツに向けて準備をしていたときのことだった。東筑のグラウンドに、土の入れ替え作業を行う業者の人がやってきた。その人は関西地区を中心に各地のグラウンドを整備しているベテランの整備員だった。その人が瞠目もくしてこう言ったそうだ。「今までたくさんのグラウンドを整備してきたが、甲子園に出る学校でこんな環境でやっているチームは初めて見た。この環境でよく甲子園に行けましたね」と。

「それを言われたとき、笑ってしまいましたよ。ウチはずっとこれでやっている。他がどんな環境なのか、逆に聞いてみたくなりましたね」

グラウンドはサッカー部、陸上部、花園出場経験のあるラグビー部と共用だ。「共用」と言いながら、佐賀北のような広大な面積を持つ公立校もあるが、東筑のグラウンドは本当に「校庭」程度の面積で、練習中にサッカーボールが飛んでくることが頻繁にある。それほどの狭さなのだ。グラウンドを全面使えるのは、月曜日と金曜日、水曜日の18時以降だけ。月曜と木曜は7限授業のため、練習開始が通常より1時間ほど遅い17時スタート。完全下校(消灯)が20時なので、平日は実質2〜3時間半程度しか練習ができない。

他部との共用日は、内野スペースを使って選手たちが自ら打つシートノックと、バックネットに向かってティー打撃を行う「逆打ち」がメイン。ブルぺンはあるが、室内練習場はないので、グラウンドから少し離れた空きスペースにネットを張って、ティー打撃を行っている。部員は各学年15~20人前後。現チームは60人と多いので、部室横にある共用ウエートルームを使って、ローテーションでウェートメニューを回している。

全面使用できる月曜日、水曜日(18時以降)、金曜日は、ケージ3台を出してマシン2カ所、手投げ1カ所のフリー打撃を行う。この時間が、唯一思い切り打球を飛ばせる時間だ。初めて東筑の練習を見たとき、失礼と思いながらも青野監督に「この練習でよく甲子園に行けましたね」と言ってしまった。秋の大会の猛打を見ていただけに、まさかこんな短い練習だとは思わなかったからだ。時間短縮のため、ウォーミングアップを行わないことにも驚いた。だからといってケガ人が多いというわけでもない。

練習メニューの切り替えのとき、選手たちは「急げ」「ダッシュダッシュ!」と声を掛け合いながらキビキビと動いていた。とにかく動きが速い。勉強(授業)から解放されて、野球ができるうれしさと「1分1秒も無駄にしたくない」という集中力が選手たちの動きに表れていた。

ところで、選手たちはこの環境、練習時間が短いことをどう思っているのか。
60人に協力してもらったアンケートによると、「練習時間が短いことに不安を感じるか?」の質問に、このような回答が返ってきた。

・全く不安を感じない・・・・18人
・あまり感じない・・・・・・31人
・まあまあ感じる・・・・・・10人
・かなり感じる・・・・・・・1人

「不安を感じない」と思っている選手が大半で8割、「不安を感じる」と思っている選手が2割という結果になった。

(文&写真:樫本ゆき)

続きは本書よりお読みください


【掲載高校】

◎県立仙台第二高校(宮城県)
「文武一道」。道は一つ。目の前の課題に全力で立ち向かう
一人一役。守備リーダー、走塁リーダーなど専門性を持って各自がチームに貢献。人間力の強化に取り組む。

◎市立金沢高校(神奈川県)
「こうなりたい」「こうしたい」意志の積み重ねが結果に繋がる
的確な指摘をすれば問題点を修正できる高い能力がある選手たち。練習に明確な意志を持たせ、今夏県のベスト8に。

◎県立掛川西高校(静岡県)
「全員本気・全員野球」勇気を持って戦う姿勢が大切
「甲子園タイム」と称して強豪校の実力を数字で可視化。緻密な数値化で結果につなげ、100%出し切った夏。

◎県立膳所高校(滋賀)
「データ野球」を武器に斬新なシフト、頭を使う野球で勝負
毎年入部した選手の良いところを掛け合わせてのチーム作り。専門データ班の分析データを活用して戦う。

◎県立松山東高校(愛媛県)
「誰かのためにやりきる」1球に熱中できるチーム作り
「勝利」を意識して、みんなで掴む野球ができた。監督就任3カ月で感じた手応え。

◎県立東筑高校(福岡県)
考えさせる大人の野球を実践。日本一短い練習で、日本一強いチームに
怒鳴らない、強制しない、決めつけない。将来を見据えた指導で選手を伸ばす。「生徒は勉強を一番に頑張って欲しい」の真意とは?


関連記事



PICK UP!

新着情報