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【仙台第二】「文武一道」。道は一つ。目の前の課題に全力で立ち向かう

2018.9.13

昨年発売した『甲子園を目指せ!進学校野球部の勝利への方程式』に続き、今年も『甲子園を目指せ! 進学校野球部の奮闘の軌跡』が辰巳出版より発売!
取材した高校の中から、仙台第二高校野球部(宮城)の本書掲載内容の一部を紹介します。


「甲子園を目指せ! 進学校野球部の奮闘の軌跡」宮城県立仙台第二高校 編



すべては1本の道につながっているーー
野球と勉強、どちらも絶対にあきらめない! (本書より)


一人一役。守備リーダー、走塁リーダーなど専門性を持って各自がチームに貢献。人間力の強化に取り組む。

「専門性を高めるリーダー制と女子マネージャーの誕生」より

金森信之介が監督となった2015年秋以降、チームには大きな変革がもたらされている。
その1つがリーダー制の実施だ。主将のほかに副将を置くだけでなく、バッテリー、打撃、走塁、守備などの各部門にリーダーを配置する。役職を与えられれば自覚も生まれ、より専門性を高めようとする意欲も湧く。先述のホームスチールを決めた高橋知希も、主将だけでなく走塁リーダーも兼ねており、走塁への向上心は人一倍強かったという。

今年のチームでも、たとえば走塁リーダーを務めるサードの水島龍汰などは技術書を読み込み、どうやって相手にプレッシャーを与えていくかを研究。走塁練習のメニューを考え、チームメイトにアドバイスもしてきた。春には足首を捻挫して県大会出場を見合わせており、実は取材時もまだ完治していなかった。それでも練習中には積極的に声を掛け、チームをサポートしながら自身のトレーニングに励んでいた。
「入学して足が速くなったんですけど、そこから代走などで使われるようになって、積極的に先の塁を狙うようになりました。さらに自分の代ではお手本を見せなきゃいけない立場になったので、走塁への意欲は高まりましたね。打撃でもパワーがあるわけではないので、ゴロを打って内野安打を狙うことも意識していますし、走塁は自分の長所として大事にしている部分。二高で野球ができて、すごく充実しています」(水島)

主砲の小川泰明は、旧チームからレギュラーとして経験を積んでいた。ただ、打撃リーダー就任によってさらに大きく変われたのだという。

「もともと打撃は好きでしたが、リーダーになったらチーム全体の打撃も見なきゃいけない。いろいろな人の打撃フォームとか、どんな練習をしているか、どんな体勢で打っているかというのをよく観察するようになりましたね。あの選手はこういう打球が飛んでいたときはこんな形になっていた。ということは、自分もそうなっているんじゃないか。そうやって考えられるようにもなり、自分の引き出しも広がってきたと思います。それと、試合で必ずしも自分の思い描いた打撃ができるとは限らない、というのも感じました。だから、全員がただ力強く打つだけじゃなくて、『最低限、こっちの方向に打球が飛べばいい』などと割り切って臨むことも大事。そういう考え方の部分も成長できていると思います」

守備リーダーには2年生ショートの鈴木杜朗。兄・隆史は2008年夏に県4強を経験しており、のちに慶應義塾大でもプレー。その背中を追って入学し、昨夏も1年生ながらファーストで出場している。
昨夏の結末は衝撃的だった。

石巻工業との県4回戦。シード校を相手に3対2とリードし、9回裏二死まで辿り着いた。しかし、ここからエースの酒井渉が四球を与える。さらに、次打者のサードゴロを処理した丸山丈登が一塁へ悪送球。また、ファーストの鈴木もパッと動いてボールを止めれば良かったのだが、何とかアウトを獲ろうとベースに着いていたために後逸してしまった。ライトは長打を警戒してあらかじめ右中間に寄っており、バックアップにも時間が掛かって一塁走者が生還。なおも二死三塁となり、次打者にサヨナラヒットを浴びて勝負は決した。

バッテリーの酒井と尾形季洋、サードの丸山、ファーストの鈴木……。あの敗戦には現世代の選手たちが深く関わっている。新チームでは、道具を収納する〝部庫〟の壁に石巻工業戦のスコアが書かれた紙を貼り付けている。鈴木は言う。

「3年生には本当に申し訳なかったですし、この悔しさは忘れません。守備リーダーになった今のチームでは、やはり基本が大切だなと思って普段のキャッチボールからしっかり意識して練習していますし、ボール回しもよく採り入れるようにしています。個人的にも、試合になっても周りを見て声を出せるようになってきました」

(文&写真:中里浩章)

続きは本書よりお読みください


【掲載高校】

◎県立仙台第二高校(宮城県)
「文武一道」。道は一つ。目の前の課題に全力で立ち向かう
一人一役。守備リーダー、走塁リーダーなど専門性を持って各自がチームに貢献。人間力の強化に取り組む。

◎市立金沢高校(神奈川県)
「こうなりたい」「こうしたい」意志の積み重ねが結果に繋がる
的確な指摘をすれば問題点を修正できる高い能力がある選手たち。練習に明確な意志を持たせ、今夏県のベスト8に。

◎県立掛川西高校(静岡県)
「全員本気・全員野球」勇気を持って戦う姿勢が大切
「甲子園タイム」と称して強豪校の実力を数字で可視化。緻密な数値化で結果につなげ、100%出し切った夏。

◎県立膳所高校(滋賀)
「データ野球」を武器に斬新なシフト、頭を使う野球で勝負
毎年入部した選手の良いところを掛け合わせてのチーム作り。専門データ班の分析データを活用して戦う。

◎県立松山東高校(愛媛県)
「誰かのためにやりきる」1球に熱中できるチーム作り
「勝利」を意識して、みんなで掴む野球ができた。監督就任3カ月で感じた手応え。

◎県立東筑高校(福岡県)
考えさせる大人の野球を実践。日本一短い練習で、日本一強いチームに
怒鳴らない、強制しない、決めつけない。将来を見据えた指導で選手を伸ばす。「生徒は勉強を一番に頑張って欲しい」の真意とは?


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