昨年発売した『甲子園を目指せ!進学校野球部の勝利への方程式』に続き、今年も『甲子園を目指せ! 進学校野球部の奮闘の軌跡』が辰巳出版より発売!
取材した高校の中から、愛媛県立松山東高校の本書掲載内容の一部を紹介します。
「甲子園を目指せ! 進学校野球部の奮闘の軌跡」愛媛県立松山東高校 編
すべては1本の道につながっているーー
野球と勉強、どちらも絶対にあきらめない! (本書より)
「勝利」を意識して、みんなで掴む野球ができた。監督就任3カ月で感じた手応え。
「野球が好きだとか、甲子園に行きたいという気持ちは変わらない」より
主将を務める友澤英佑右翼手(3年)も、強い意志をもって松山東野球部に入部した1人だ。文武両道を目指し、腹をくくって野球部に入ったと言ってもいいだろう。
「勉強と野球、どっちかを捨てるっていうのが嫌やって。どうせやるならどっちもやりたいっていう気持ちが、中学校のときからありました。なんか、勉強捨てるのも逃げやなって。どっちも必死に取り組んだ結果、高校3年間で自分がどうなるんかな? それをやり切ったなかで見える世界がどんなんなのかな?っていうのが気になった。それがきっかけです」
だが、本音を言えば、やはり野球と勉強との両立はしんどい。勉強をおろそかにすれば、補習で残され、部活に出られない悪循環になる。練習量の少なさは、自主練習でカバーしてきた。中学1年の終わりから、毎日欠かさずバットを振り続けている。
「365日でバットを振らない日が、多分1日もないんです。あんまり細かくは決めてないですけど、中学校のときから欠かさずやっているので」
両手を見せてもらうと、1週間やそこらではできるはずのない、固くなったマメがいくつもあった。自宅にティー打撃用のネットがあり、中学生の弟・翔英と交互に打ち合う。
話を聞いたのは、環境整備日の月曜日だった。1週間後に始まる定期考査に向け、早く帰って机に向かわなくてはならない。だが、その前にバットを振る。最後の夏は待ってくれない。
大屋満徳部長は、赴任してから今年で5年目となる。25年前はサイドスローの投手として、このグラウンドで汗を流したOBだ。
「いまの子は、さぼらんですね、限られた時間で一所懸命する。この学校に帰って来て、一番最初に思ったのがそこやったですね。僕らのころは、夜もちっちゃい電灯つけてティー打ったり、9時すぎとか10時ごろまで部室でだらだらしたり。ほんと、だらだらしよった(笑)」
愛媛・中予地区の学校のほとんどは、高野連から通達されている「原則として1週間につき最低1日は野球部としての活動を行わない日を設ける」(日本学生野球憲章第2章「学校教育の一環としての野球部活動」第8条(学校教育と野球部の活動との調和)2より抜粋)を守っている。松山東も例外ではない。月曜日を環境整備日に充てているのはそのためだ。さらに「19時10分には完全下校」という決まりがある。
非常に真面目な選手たちが多い。今年4月から松山東に赴任したばかりの友近拓也監督も、やはり同じような印象を持っていた。友近監督もまた、松山東野球部のOBである。大屋部長より4歳下、当時は二塁手、副主将を務めた。筑波大でプレーしたあと、教師の道を目指して愛媛に戻り、初任地となった今治西で部長として春2回、夏2回の甲子園出場経験がある。その後、東予の強豪校、川之江で9年間、監督を務めた。実は大学卒業後に2年間、松山東で講師を務めたことがあり、母校に赴任するのは今回が2度目である。当時も野球部のコーチを務めた。
「当時はおおらかな部分があって、選手がのびのびとやっているイメージだったですね。ちょっと時代が変わったかもしれないですけど、すごく真面目になっていると思いますね。でも、野球が好きだとか、甲子園に行きたいとか、頑張りたいっていう気持ちは変わらない。うちの子らも、勉強はやりなさいという環境のなかで、朝の練習だったり、家でも自主練習とかやってるんだろうし。そういう思いというのは、どの学校も変わらないと思いますね」
勉強はやって当たり前、週1回の休養日もちゃんと取っている。そんな学校生活のなかで、練習時間が少ないことは乗り越えなくてはならない宿命のようなものだろう。だが、本音は1日でも、1時間でも多く、練習に費やす時間がほしいのではないか。そう尋ねようとした。
「でも、週1回はやっぱり休むべきですね」
友近監督の一言は、まったく思い掛けないものだった。
続きは本書よりお読みください
【掲載高校】
◎県立仙台第二高校(宮城県)
「文武一道」。道は一つ。目の前の課題に全力で立ち向かう
一人一役。守備リーダー、走塁リーダーなど専門性を持って各自がチームに貢献。人間力の強化に取り組む。
◎市立金沢高校(神奈川県)
「こうなりたい」「こうしたい」意志の積み重ねが結果に繋がる
的確な指摘をすれば問題点を修正できる高い能力がある選手たち。練習に明確な意志を持たせ、今夏県のベスト8に。
◎県立掛川西高校(静岡県)
「全員本気・全員野球」勇気を持って戦う姿勢が大切
「甲子園タイム」と称して強豪校の実力を数字で可視化。緻密な数値化で結果につなげ、100%出し切った夏。
◎県立膳所高校(滋賀)
「データ野球」を武器に斬新なシフト、頭を使う野球で勝負
毎年入部した選手の良いところを掛け合わせてのチーム作り。専門データ班の分析データを活用して戦う。
◎県立松山東高校(愛媛県)
「誰かのためにやりきる」1球に熱中できるチーム作り
「勝利」を意識して、みんなで掴む野球ができた。監督就任3カ月で感じた手応え。
◎県立東筑高校(福岡県)
考えさせる大人の野球を実践。日本一短い練習で、日本一強いチームに
怒鳴らない、強制しない、決めつけない。将来を見据えた指導で選手を伸ばす。「生徒は勉強を一番に頑張って欲しい」の真意とは?
関連記事
-
【掛川西】「全員本気・全員野球」勇気を持って戦う姿勢が大切 2018.9.10
学校・チーム -
【松山東】「誰かのためにやりきる」1球に熱中できるチーム作り2018.9.7
学校・チーム