学校・チーム

【検見川】激戦区千葉で躍進続ける「日本で一番試合に出られる野球部」(後篇)

2017.11.20

検見川高校野球部を率いる酒井光雄監督

いわゆる普通の公立高校ながら、激戦区千葉で春夏連続ベスト4に進出する躍進を見せた検見川高校。前編ではとにかく多く試合をこなすことや、他のチームがやらないプレーにも取り組んでいることを紹介したが、後編ではある日の練習についてレポートする。


取材したのは10月下旬。前々日まで降っていた雨の影響もあって、グラウンドの一部が使えない状況だったがこの日は3班に分かれてバッティング、ノック、ランニングのメニューを行っていた。その中でも特徴的だったのがランニングメニューだ。

少し低めのハードルを置いてダッシュを行い、その後はラダーと高さのあるハードルを使ったステップを行うというものだった。

ただ走るのではなく、低いハードルを越えながら走るためにはストライドを伸ばす必要があり、自然と股関節を使った走り方ができるようになるという。その後にラダーを使った細かいステップでフットワークを良くする動きを行い、最後に再び高いハードルを使って股関節を大きく使う動きを入れることで、下半身全体の強化に繋がるそうだ。走力とフットワークの向上はもちろんだが、それ以外の効果もあると酒井監督は話してくれた。

「これをやると股関節を使って走れるようになるので、ハムストリングとかふくらはぎに負担がかからなくなって、故障しなくなるんですよ。だからうちの選手で肉離れする選手は本当にいないですね。故障で練習ができなくなることが何よりもマイナスですから、そういう意味でも効果は大きいと思います。今日は三種類入れていますが、もう少し小さい円を作ってコーナーリングを意識したメニューにすることもあります」

バッティングについては外野に向かって打つことができないため、バックネットに向かって行っていたが、脇にあるスペースも含めて全部で6カ所で実打を行い、さらにそばのネットではティーバッティングも行っていた。

またノックについても受ける選手の数は少なく、バント練習も同時並行という形式をとっている。グラウンド全体を見ると、無駄なことをしている選手がいないというのがよくわかる。これについても酒井監督の狙いがあるという。

「野球の練習って結構無駄が多いと思うんですよ。シートノックでも見ている、待っている選手が多い。あと逆に特守のような極端な個人練習もありますが、息を切らしながら受け続けても技術の向上にはならないと思うんですよね。だからなるべくプレーに参加しない選手を作らないような練習にはするようにしています」

もう一つ気づいたことは、監督やコーチが指示を出さなくても選手が次々と動いていることだ。酒井監督も選手に対して厳しい声をかけたりする場面は一度も見られなかった。

「これはうちの選手の良いところだと思いますが、こちらが言わなくても、ピリピリした雰囲気を出さなくてもしっかり練習するんですよね。試合を多くしている効果もあると思いますが、自分たちで上手くなりたいという意欲が高いんだと思います。だからこちらもボールが落ちていたりとか、整理整頓ができていないとか生活面では厳しいことは言いますが、練習自体は無理に厳しい雰囲気は出さないですね。

今日も練習メニューが決まっているので、こちらから何か言わなくても自分たちでしっかり動けていると思います。ただ頭が働く分、こちらが言ったことに対して納得しないと動きません。ミーティングがなかなか終わらないこともあります(笑)。だからこちらも下手なことは言えませんし、きちんと腹落ちするように話をするようにしています」

全員が試合を多く経験し、その経験からそれぞれが意欲を持って課題に取り組み、無駄の少ない練習を行う。そのサイクルが上手く循環していることが検見川の強さを生んでいると言えるだろう。そう強く感じる取り組みだった。(取材・撮影:西尾典文)

「検見川高校」関連記事



PICK UP!

新着情報