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【取材こぼれ話】千賀滉大「才能を開花させるために必要なこと」

2017.7.31

育成入団からWBCベストナインまでに上り詰めた千賀投手

育成の星から世界の千賀へ。鋭く落ちるお化けフォークを武器に、今年春に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でベストナインに選ばれて世界にその名を轟かせた千賀滉大投手は、育成枠での入団だった。甲子園常連校ではない高校からプロ入りし、どのようにして日本球界を代表する投手になったのか? その秘密をタイムリーに教えてくれた。


3年の秋、夏のマックスの状態を
ずっと維持できていたことが球団に評価された

── 甲子園の出場経験はない千賀投手ですが、いつ頃からプロ野球選手になることを意識していましたか?

千賀投手:大学の監督さんやプロのスカウトの方が来てくれるようになった高校3年になる春ですね。それまではただ毎日野球をして過ごしていて先のことは何も考えていませんでしたが、卒業後も野球を続けられるのかなって思うようになりました。

── スカウトの方から注目されたのはどこだったのか、千賀投手自身はどう思いますか?

千賀投手:スカウトの方たちに言われたのが「身体がやわらかく、他のピッチャーとは違う球質になっている」ということ。それとトレーニングの姿勢ですね。(福岡ソフトバンク)ホークスのスカウトの方が来てくれたのがドラフト直前の3年の秋。最後の試合が終わって2カ月くらい経っていましたが、夏の大会までのマックスの状態をずっと維持できていたことが評価されました。このまま大学やプロに行ってもすぐに野球ができる準備ができているって。

── そんなふうに誰かの目に留まるために、球児が真似できることはありますか?

千賀投手:目標を立てて、それを実行するだけですね。身体をやわらかくするとか、ご飯をたくさん食べて身体を大きくするとか。簡単ではないですけど、もっとうまくなりたいって思ったらできるはずだし、常に上だけを見ていれば行動も変わります。僕らの代は、歴代の蒲郡高校の野球部員の中で一番がんばったっていえるくらいよくやったと思います。

インタビューに答えてくれた千賀投手

── プロ入り後、野球への取り組み方は変わりましたか? 育成枠で入団し、今は一軍の中心選手として活躍できている秘訣があったら教えてください。

千賀投手:プロに入ってからは、常に自分を第三者の目で見ています。自分には今これが足りないから次はあれをしようって決めて、その目的に向かって行動する。高校生の頃はただただ自分の能力を上げることに必死でした。でも、基本的な取り組み方はどちらも同じかもしれないですね。

── 野球がうまくなりたいと努力を続けた結果、今年は春のWBCで日本代表メンバーに選出されて、ベストナインにも選ばれましたね。

千賀投手:WBCは僕を成長させてくれました。別のチームに所属する12球団の選手たちが集まって、ひとつのチームを作って、他の国と戦うっていうのも貴重な経験でした。普段はあまり関わることのない他球団の選手たちからいろんな話も聞けましたし、「いい経験」っていう表現が本当にぴったりです。

── 初めてのWBCは緊張しましたか?

千賀投手:いえ、まったくいつも通りです。WBCに限らず、投げることに関してはもう緊張しなくなりました。プロ入りしたばかりの頃はいつも緊張して、ガチガチになってうまくいかなくて、次の年から先発じゃなく中継ぎになってしまった。だから、緊張していたらもったいないなぁって思ったんです。緊張って頭で考えてするもんじゃなくて、その場面になったら自然に出てくるもの。高校生なら夏の大事な試合で緊張するのは当たり前だし、3年の夏ならなおさら

でも、それに向けての2年間半を過ごしているわけで、緊張したからってヤバイとか恥ずかしいって感じる必要はまったくない。それよりも、緊張して普段の力を出せずに後悔する方がもったいない。緊張するほどの大事な大会に出るってことはそれだけ貴重な体験。だから自分の力を発揮できるくらいの平常心でいるべきなんです。

── 緊張しない方がいいって頭ではわかっていても、自分の意志でそれを止めるのは難しくはないですか?

千賀投手:それには、目の前で起きていることを受け入れるのが一番だと思います。僕はこれまで、どうやって試合に臨んだら一番いい成績が残せるのかあれこれ試していて。このバッターはこうだからああしようこうしようって細かく考えて投げたり、逆に野球のことを考えないように雑念いっぱいで登板したり。気を紛らわすためにキャッチャーミットだけを見つめたり、「今日はお客さん入っとんなー」って観客席を眺めたり。いろいろやっているうちにいつも平常心で冷静にマウンドに上がれるようになりました。気合を入れても打たれるときは打たれますから。

── 一番心が安らぐのはどんなときですか? 好きな気分転換法ってありますか?

千賀投手:マンガを読むことですね。一番よく読むのはやっぱりスポーツもの。サッカーやバスケ、格闘系も好きで、最近読んでいるのが『バトルスタディーズ』『ダイヤのA』『スラムダンク』『H2』は全巻買って、チームメイトにも読んでほしくてヤフオクドームの風呂場に置いてあります(笑)。交代浴して身体をほぐしながらマンガを読むっていうのが、僕にとっての最高のリラックスタイムですね。


▼プロフィール
千賀滉大選手[福岡ソフトバンクホークス/投手]
1993年1月30日生まれ。愛知県蒲郡市出身。小2から野球を始め、蒲郡高校進学後に投手へ転向。2010年育成ドラフト4位で福岡ソフトバンクホークスに入団。2016年から先発ローテーションの一角を担い、2017年第4回WBCではベストナインに選出、成長著しい育成の星。

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