野球において“指先に力を入れる”という表現をよく聞くだろう。実は、指先に力を入れるためには、爪が欠かかせない。指先には骨がなく、硬い爪があるからこそ力を入れることができるからだ。
強豪校では専属のネイルトレーナーをつけるほど、爪への意識が高まっている。この機会にキミも指先に注目してみよう。
保湿が爪を守るカギとなる
骨ではなく爪は皮膚の一部
医者が患者の健康状態を診断するとき一つの基準として、患者の爪を見ることがある。なぜなら、爪の色や艶の変化が体内の異変を表す一種のバロメーターになるからだ。
爪はケラチンという成分で構成され、表皮の角質が硬化してできたもの。言ってしまえば皮膚と同じ部位なのだ。爪は骨ではないため、カルシウムを摂っても余計に伸びたりはしない。
爪は1枚ではなく、3枚の層でできている。縦の繊維→横の繊維→縦の繊維がプレスされていて、よく聞く二枚爪や割れ爪と呼ばれる症状は、本来3枚なければいけない爪の1枚がはがれてしまっている状態のことを指す。プロ野球の投手でも二枚爪が原因でコントロールを乱してしまい、降板するケースがあるが、それくらい爪は投手にとって重要なパーツなのだ。
野球選手は他のスポーツ選手に比べると、爪に気を遣っている人が多い。しかし、短く切り過ぎた深爪の人が多く、正しいメンテナンス法が普及していない。昨夏甲子園に出場したある高校では、爪のプロフェッショナルであるネイルトレーナーを大会に帯同させていた。意識の高い球児や指導者は、正しい爪のケアというものを重視しているのだ。
乾燥は爪のケガに繋がってしまう
爪のケアの最大のポイントは「保湿」だ。練習後に専用のオイルやクリームを使い保湿することが爪に起こるさまざまなトラブルの予防に繋がるのだ。また、爪の根元にある半透明の皮膚を甘皮と呼ぶのだが、この甘皮は爪に細菌や異物が入らないよう守ってくれる大切な部分だ。だが、甘皮が余分にあったり、広がり過ぎるとささくれの原因になり、本来爪に行き渡るべき水分や油分を横取りしてしまう。右ページを参照して甘皮処理も定期的にやってみよう。
プロ野球選手の多くは、爪切りではなく専用のやすりで爪を削る。爪切りは切るとき圧をかけるため、爪への負担が大きい。長く伸びすぎてしまった場合を除き、普段はやすりを使い整える方が爪にとっては良いだろう。爪の保護としてマニキュアを塗る球児もいるが、層を厚くするという面では効果はある。しかし、除光液でマニキュアを落とした後、しっかり保湿することを忘れないように。
指先に力を入れるとき、爪が丈夫でなければボールやバットに力をうまく伝えることができず、パフォーマンスを発揮できない。アスリートたるもの、爪にもこだわって、次のステージに上がろう。
今すぐできる簡単「爪」ケア
簡単ケア1:爪やすりを使って整えよう
爪を大事にするなら、爪切りではなく爪やすりで、爪の長さを調整しよう。爪やすりの使い方のコツとしてはゴシゴシと往復させて削らずに、一定方向に少しずつ削り、削った面をなめらかに整える。爪と、爪やすりを直角に当てると爪のひび割れや、二枚爪の原因になるので、斜め45度に当てて、一定方向に丁寧に削っていけばキレイな爪の形になる。3日に1回のペースでやるのがオススメだ。
簡単ケア2:ガーゼを巻いて甘皮を処理
甘皮は爪を保護する役目を持っているが、必要以上にあると、爪に必要な水分を奪ってしまう。簡単にできるケアとしては、まずお風呂に入って、甘皮部分をふやかす。そして、取りたい側と逆の手の親指にガーゼを巻く。ガーゼを巻いた親指で、甘皮を優しく押し上げるようにして適度に取っていこう。頻度としては2週間に1回のペースが理想的だ。もちろん処理が終わった後は、保湿することも忘れずに。
簡単ケア3:保湿オイルで潤いキープ
爪は皮膚と同じだが、生きている細胞ではなく「死んだ細胞」なので呼吸もせず、汗もかかない。髪の毛と同じく自己再生できない箇所なのだ。そのため日ごろから保湿で潤いを与えることが大切。専用のオイルや、ハンドクリームをこまめに塗り乾燥を防ぐ。練習・試合後はしっかりと手を洗い、爪のケアをしよう。しかし、練習・試合前はオイルなどを塗ってしまうと、ボールが滑ってしまうので要注意だ。
[取材協力]アスリートネイル協会・代表理事 田中知美さん
数多くのアスリートの爪のメンテナンスに携わっている爪のスペシャリスト。アスリートネイル協会の代表として、スポーツ業界とネイル業界に新しい風を吹き込む活動を行っている。http://athlete-nail.com