私は「少年野球のコーチ」の心得として以下に挙げる2つのことがとても大切だと思っています。
①「選手に一番近い大人」であるべき
監督は選手起用の最終決定者であるため、公平を期すために全ての選手と同じ距離を保たなければならないと思います。しかしコーチは「コーチング」が仕事ですから、悩める選手には寄り添ったり、乗っている選手は自由にやらせたり、日々選手との距離感を変えながら、「選手が一番活躍しやすい環境」をつくることが必要だと思っています。そのためには故障や気持ちの変化にも一番最初に気付くべきだと思います。当然、監督よりも選手とのコミュニケーションの量は多くなければならないと思います。
②監督を活かすのはコーチの役割である
チームの最終決定者はあくまでも監督です。グラウンド内で最も高い権限を有する代わりに、結果に対する責任を負っています。監督が責任を全うするために、「監督が最もやりやすい状況」をつくるのもコーチの仕事だと思います。だから仮に監督と意見が違っても、選手の前で異議を唱えるのは監督の「やりやすい状況」を阻害することになるので避けなければなりません。チームの作戦面や選手育成などに意見があれば、まずは監督に個別相談を持ちかけ、合意形成を得てから選手に話すべきだと思います。仮に監督が自分よりも技量が低くても、コーチは監督よりも目立ってはいけないと思います。
スポーツは「選手が主役」だと思います。しかし、チームという「組織」がその能力を最大限発揮するには、選手だけでなく、監督もその能力を最大限発揮し、その役割を全うして頂く必要があります。コーチは会社で言うならば「中間管理職」です。中間管理職は「部下を活かす」だけでなく「上司も活かす」ことで上司と部下の橋渡しを行ない、組織全体を円滑にする役割を担っていると思います。
コーチは「チームの潤滑油」だと思います。
※Facebookページ「少年野球指導者のひとり言」より転載。
著者:廣川 寿(ひろかわ ひさし)
愛媛県出身。松山北高校時代に投手として選抜高校野球(春の甲子園)に出場。甲南大学時代は投手として阪神大学野球連盟の数々の記録を塗り替える。社会人野球まで投手として活躍。自身の息子が少年野球チームに入部したことをきっかけに学童野球のコーチとなる。現在は上場企業の管理職として働く傍ら、横浜港北ボーイズのコーチとして「神奈川NO.1投手の育成」を目標に掲げ、中学生の指導に情熱を注ぐ。