プロ注目の大型右腕・木村優人
今年のエースでドラフト上位候補と言われている木村優人も、霞ケ浦に入学してからこの30メートルの立ち投げをしてスピードもコントロールもアップしたと話していた。もちろんただ投げるのではなく、サボテンに時折水を与えるように適切な指導があったからというのは間違いないだろう。高橋監督が特に指導の際に重要視しているのは立ち姿や姿勢だという。「沢辺先生は『うねり、はがし、受け』の3つをポイントとして仰いますが、自分はその前の立ち姿も大事だと思っています。一本足で立った時のバランスが良いかというのはよく見ていますね。フォーム全体もそうですけど、そういうビジュアルは気にします。見ていてかっこ悪い選手にいい選手はいませんからね。かっこ悪いと感じるのは体の軸が曲がっていることが多いんですよ。それは歩く姿、走る姿にもよく出ますよね。股関節と肩関節の連動は走ることも投げることも共通しています。だから姿勢よく走るというのは大事だと思いますね。木村は綾部や遠藤に比べると走る姿がかっこよくなかったので、そういうことは言いました。本人も意識して、だいぶ良くなってきたとは思いますが」
近年は高校野球も打者のレベルが上がり、また球数制限が導入されたこともあって1人の投手で勝ち進むことは難しくなっている。ただ、複数の好投手を揃えていても、一発勝負のトーナメントでは投手起用の判断が命取りとなることも少なくない。高橋監督もいまだに継投などは難しいと話しており、赤羽、山田大河(現・日本体育大)、渡辺夏一(現・桐蔭横浜大)と3人の超高校級の投手が揃っていた昨年もそのことを痛感したという。
「3月までは山田が絶好調で、これは夏も期待できると思っていました。その後、3月25日に自分が手術を受けて2カ月くらいチームを離れていたのですが、戻ってきたら山田が春先とは別人のように調子を落としていたんですね。これは困ったなと思っていたら、渡辺が急に良くなってきたんです。赤羽は能力は高いけど投げてみないと分からない。そんな状態で夏の大会に臨みました。案の定、渡辺が4回戦で完封したりして抜群の内容だったので、準決勝の土浦日大戦も渡辺を先発させました」
ただ準決勝は4回を終わった時点で渡辺に疲れが見えていた。
「0対0だったので、裏の攻撃で渡辺に代打を出して先制点を狙おうとも思いました。ただ残りの5イニングを山田に任せられる状態ではなかったと思ったので、渡辺を引っ張ったら5回に先制されて、結局それが決勝点になりました。山田が春みたいな状態だったら5回から交代だったと思いますが、それができなかった。その時の状態、その日の状態を見極めながら起用するのは本当に難しいですね」
今年のチームは昨年のように力のある投手は多くないが、前述した通りエースの木村はプロも注目する好投手であり、その成長ぶりは順調だという。ただ一方で課題についても高橋監督は口にした。
「木村に関してはここまでは順調すぎるくらい順調ですね。下級生の頃はどうしても力んでバランスが悪くなることが多かったですが、ストレッチと下半身の強化を重点的にやってきたことが良かったのか、この春からぐっと良くなったと思います。木村に限らず1年の冬よりも2年の冬に伸びる選手が多いですよね。最高学年になる自覚なのかは分かりませんが。ただ、木村は入ってきた時から試合に出ていることもあって、少し“お山の大将”になってしまっている部分はあると思います。今までプロに行った綾部、遠藤、鈴木なんかは中学の時は全く期待されていない選手だったので、そういう点が少し違うのかもしれませんね。もう少し木村自身も周りの選手に対してリスペクトして、大人になってくれると良いと思っています」
木村に対して厳しい言葉もあったが、それでもこれだけ注目される選手になったのは本人の努力と高橋監督の適切な指導があったからだろう。また2番手以降は厳しいという話だったものの、下級生にも楽しみな素材はいるという。来年以降も霞ケ浦からまた高校球界を代表するような好投手が出てくることも十分期待できそうだ。(写真・取材/西尾典文)
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