筑波大学硬式野球部監督でもある川村卓准教授の著書「新しい投手指導の教科書 これからの野球に必要な『投手兼野手』の育成術」(カンゼン)から、現場での投手育成に役立つ部分を抜粋して紹介したいと思います。今回は第5章「実戦で力を発揮する方法」の一部を紹介します。
シャドウピッチングのすすめ
野手の場合、内野手でも外野手でもキャッチボール、シートノックでそれなりの球数を投げている。そこにさらにブルペンでの投げ込みを加えると、「本職の投手以上に投げている」なんてことが起こりうる。ヒジ肩への負担を考えると、できるかぎり、1日に投げる球数は抑えておきたい。そこでおすすめしたいのが、タオルを持ったシャドウピッチングだ。タオルをただ持つのではなく、フォーシームの握りをイメージして、人差し指と中指を巻くようにして握る。棒を振るようなやり方もあるが、人差し指と中指に巻いたほうがボールに指をかけるのに近い感覚を得やすいのではないだろうか。
投球を意識するのなら、マウンドをイメージして、軸足を台の上に乗るのもひとつの方法だ。マウンドでの投げ込み以外でも、マウンドの傾斜に慣れる時間を作っておく。
シャドウピッチングは実際のボールが見えないだけに、チェックポイントが難しいとも思われている。私が提案したいのは、踏み出し足の着地を一定にすることだ。何度踏み込んでも、同じ場所に着地できていれば、下半身の使い方が安定していると考えられる。このときに、踏み出し足のヒザ頭とつま先が、投げたい方向に向いていることをチェックしてほしい。コントロールがいい投手は、フォームの再現性が間違いなく高い。ボールを投げないシャドウピッチングだからこそ、再現性に意識を向けることができるはずだ。
もうひとつ、ネットスローという選択もある。文字通り、ネットに向かってボールを投げていく。相手がいるとどうしてもコントロールを気にしてしまうが、ネットであれば、相手に迷惑をかけることはない。下半身の体重移動、ヒジを上げるタイミングなど、自分の体の動きにフォーカスを当てることができる。このときも、踏み出し足の着地位置に気を配っておく。
ネットまでの距離は目的に応じて変わる。フォームと向き合うときは7メートルほどで、球筋まで見たいときは10メートルほどの距離がおすすめだ。
シャドウピッチングもネットスローも、ひとりでできる練習であり、ヒジや肩への負担も少ない。バッティングの素振りに近いものがある。野手の練習とのバランスを見ながら、取り組んでみてほしい。
*続きは書籍でお楽しみください。
内容紹介
科学的アプローチから導く最前線の野球コーチング本「野手兼投手」の育て方にクローズアップ
二刀流は当たり前?
ケガ予防&投球数制限対策に
エース1枚から継投で勝ち抜くチーム作りを
スペシャルインタビュー
工藤公康(元福岡ソフトバンクホークス監督)
<目次>
第1章 投手と野手の違い
第2章 一流投手のメカニズム
第3章 タイプ別の指導法
第4章 下半身と上半身をつなげるトレーニング
第5章 実戦で力を発揮する方法
書籍情報
川村 卓カンゼン
1800円(税別)