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「指導者は『答え』よりも『問いかけ』を」中竹竜二|世界を獲るノート

2021.9.22

『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(島沢優子/カンゼン)という本があります。卓球の伊藤美誠選手、柔道の朝比奈沙羅選手など、世界を目指すトップアスリート達が日々ノートに何を書き、何を考えているのか? この本の中から、今回は日本ラグビー協会初代コーチングディレクターの中竹竜二さんの「『フレーミング』で進化する」の章の一部を紹介したいと思います。ぜひ参考にしてみてください。


「自分の言葉で課題解決方法を他者に伝え、アウトプットできればハイレベルのリーダーになる」


2018年にスポーツ現場おけるパワハラや暴力が問題になった際、筆者は中竹に取材してハッとさせられたことがある。

他競技の強化担当者が「暴力やパワハラはダメだと文書やサイトで通達しているのですが、なかなか届きません」と困り顔で話すなか、中竹は「僕は暴力やパワハラがどうのという話をしたことがない」と言うのだ。
「暴力を減らすことを目的にするのではなく、結果論として暴力が減っていけばいいん
じゃないですか。まずい指導からいい指導に変化すれば、コーチは選手を力でねじ伏せる必要がなくなります」
「選手を成長させたいなら、まずコーチが成長しよう。コーチが変われば、選手が変わる」
研修会では、そう指導者に呼びかける。

鍵は、選手の可能性を信じられるかどうか。
「信じられれば、主体的に動く彼らを見守ることができる。それができないのは他者を信じられない人。裏返せば自分に自信がない人です」

つまり、自分の指導力に自信があれば、目の前にいる選手を信じられる。選手の主体性に注目する指導者こそが、選手を伸ばすとも言える。その意味では、ノートを書く作業も、言われたことだけを書くチームは上意下達の色が濃いように見える。

何かを伝えた際に、「はい」と返事されれば、言ったほうは気持ちがいい。しかし、本当に理解しているか。わかっているかどうかは、返事だけではわからない。

中竹は指導者に、選手が返事した後「今、僕、なんて言った?」と確認してほしいと伝える。
「ビジネスの現場でも一緒ですよ。もう一度言ってみて、と問いかけてほしい。部下はほぼ、言えなかったりします。自分で言えるかどうか。言えることをノートに書けるか。要約できる力が重要なのです」

指導者は、回答する人ではなく、問いかける人になること。
ただし、最初から「どうしたらいいか?」「何をしたいのか?」は、ハードルが高い。「最初は、イエス・ノーで答えられる質問から始めるといいでしょう」



中竹竜二(なかたけりゅうじ)

1973 年福岡県生まれ。早稲田大学卒業後、英国へ留学。三菱総合研究所等を経て、早稲田大学蹴球部監督となり大学選手権2連覇達成。2010年、日本ラグビー協会初代コーチングディレクター就任。(株)チームボックス代表。『新版リーダーシップからフォロワーシップへ』など著書多数。

著者:島沢優子(しまざわゆうこ)

ジャーナリスト。筑波大学体育専門学群4年時に全日本女子大学バスケットボール選手権優勝。2年間の英国留学等を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年からフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。著書に『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『部活があぶない』(講談社現代新書)など。日本文藝家協会会員。


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