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【女子頂上決戦】超ダークホース高知中央。快進撃と意外なTikTok人気

2021.8.18

兵庫県丹波市のつかさグループいちじま球場で開催された女子硬式野球選手権大会準決勝で、秀岳館に2-1で勝利し、決勝へコマを進めた高知中央。史上はじめて甲子園で開催される決勝戦は、8月1日の準決勝から約3週間後という変則日程だ。決戦の23日までの20日間、決勝へ進出した両校はどのようにモチベーションの維持を図り、調整しているのだろうか。


決勝への気合十分「勝つしかない、やるしかない」

チーム発足3年目 公式戦初勝利から決勝へ

高知中央女子硬式野球部は2019年創部、今年の3年生が1期生の若いチームだ。チーム発足初年度は公式戦で勝ちが付かず、2年目は新型コロナウイルス感染拡大の影響で公式戦が全て中止になった。チームにとって公式戦ではじめて勝利したのが、今年8月26日。つまり、この夏の1回戦だ。勢いそのままに決勝へ進出した。

「選手権大会期間中は(選手のみんなが)すごく元気がよくて、雰囲気がよかったです。でも3回戦、横浜隼人との試合の前に『これが最後の試合になると思うから』って話はしていました」。

主将の氏原まなか(3年)は真剣な表情でここまでの快進撃を振り返った。


「技術は相手の方が上」と話す氏原は地元出身の主将だ。

現在33人が在籍、全国約40校ある女子硬式野球部のなかで決して多い方ではない。しかしダークホースとなる片鱗はのぞかせていた。春の選抜大会では、春夏ともに最多優勝回数を誇る埼玉栄に1-3で敗退し初戦で姿を消したものの、8回タイブレークまで粘る善戦を見せたのだ。

同部を率いる西内友広監督もまさか決勝へ進出するとは思ってもいなかったようで、準決勝後には報道陣を前に「8月中は県内で開催される大会の手伝いとか他にも予定を入れていたんですが…」と嬉しい悲鳴を上げた。


西内監督は高知県内の女子野球普及に努め5年目になる。

チームは8月5日に小学生の女子野球チームの交流試合を手伝い、6日は全日本選手権へ出場するために四国へ来ていた神村学園と強化試合、7日から3日間は、高知県高知市内の春野球場・高知球場・東部球場で開催された『高知家ダイヤモンドスポーツフェスタ女子硬式野球交流会』へ参加していた。同交流会へは高校の女子野球部とクラブチームが参加し、試合の感覚を維持していた。

安芸球場でマウンドの感覚をつかむ「練習したい!」

エースの和田千波留(2年)は「高知中央は明るくて勢いがある。神戸弘陵も明るいのですが、迫力がある。負けない余裕さ、勝てる自信を感じます。ヒットは絶対に打たれるので、そこで気持ちを切り替えないと連打されてしまう。気持ちの隙につけ込まれると思います」と、相手打線を警戒する。
完投した準決勝では、持ち味の制球力が発揮できなかったことを課題にあげたが、強化試合や交流試合を通じで調子を上げてきている。

同部は学校ホームページのクラブ紹介で『活動日 毎日』と記載するほどオフが少ない。この夏は毎年8月にあるお盆休みも返上し、1期生の集大成へ部員全員で最終の追い込み中だ。

「休みは無くていいから今は練習したいです! 勝つしかない、やるしかないので、やってから休みたいです」。和田は明るい声でそう話した。


取材日当日は変化球を中心に投球練習を行った和田。

高知県ならではの地の利も活かし決戦の日へ挑む。学校から車で約1時間のところにある安芸球場は、阪神タイガースがキャンプ地として利用している。そのためマウンドの傾斜や硬さなどが甲子園球場と似ているのだ。夏の選手権前にも安芸球場で練習を重ね、決勝前最後の球場練習も安芸球場で行う予定である。和田が「(安芸球場での練習は)意図的だと思います」と話したのに対し、西内監督は「ただ安芸球場がとりやすかっただけで、そんなつもりはなかったんですけどね」と笑っていた。

ピンチの場面で監督自らがマウンドへ足を運ぶ姿が大会中2回あった。「監督がマウンドへ来てくれると強気になれる。『来てくれたんだぁ』って感じです」と和田が話すなど、監督と選手の絆の強さも、ここまで勝ち上がってきた一因だ。

オンラインでの女子野球普及活動にも注力

同部といえば昨年、動画投稿アプリ「Tik Tok」で最速124キロ右腕・松本里乃(3年)の動画がバズったことでも有名だ。女子野球普及のために取り組んできた15秒の動画撮影だが、夏の選手権期間中は同アプリへの動画投稿を控えている。これまで行ってきた活動の貢献度はフォロワー約85万人(8月12日時点)の数字が物語っている。松本をきっかけに決勝のライブ中継を見る人が多くいるだろう。「これまで女子野球を見る機会がなかった人が多いと思うし、フォロワーも初めて見る人が多いと思う。登板機会があればチームを引き立てられるピッチングをしたいです」と意気込んだ。

また、高知中央には全国の女子硬式野球部唯一、海外から野球留学で入学している選手が在籍している。「日本(の女子野球)がなぜ強いか自分で見てみたかったから。将来は台湾で女子野球を広めたい」と留学理由を語った黄晴(2年)は台湾の屏東市出身。海を渡って挑戦する女子高生として台湾のテレビでも紹介された。足首を故障中のため、現在は練習のサポート役だが「日本人にはない独特な球を投げる」と西内監督も期待を寄せる。


「日本は練習態度、方法、自主意識が高い」と話す黄。


「台湾の友達から『おめでとう』と言われ、羨ましがられました。甲子園ではノーエラーで両チームともヒットが多く、でも高知中央の方がたくさん打つ試合を見たいです」。

コロナ禍で入出国が困難なため両親とはずっと会えていない。異国の地での厳しい練習や日本語の勉強に加え、足首の手術もひとりで乗り越えた。「すごく心配してくれている」という両親を喜ばせるためにも日本一の吉報を母国へ届けたい。

(取材・文・写真/喜岡 桜)

※女子野球の決勝戦は8月23日(月)17時より試合開始予定(2021.8.20現在)



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