学校・チーム

「控え選手のモチベーションを高めたい!」Bチーム中心の“桃太郎リーグ”岡山で始動!

2021.5.4

Bチーム以下も公式戦に出場できるサッカーなどと異なり、野球では学校ごとに1チームしか出場できない。そのため部員数が多い学校では、日々の練習の成果を公式戦で試すことなく 引退していく選手もいる。より多くの球児に、試合の楽しさを体験させてあげたい!そう強く願う監督たちの想いから、岡山である試みがスタートした。


岡山県内の高校硬式野球部で新たなリーグが創設された。その名も「桃太郎リーグ」。控え選手でつくる「Bチーム」を中心に公式戦を開催する。参加校は岡山県高校野球連盟に所 属する59校中、公立12、私立9、計21校。桃太郎リーグの参加チームの中には、部員が少ない学校も含まれている。一部レギュラー選手を加えたり、チーム全員で出場したりすることも可能だ。

 岡山県では野球部の監督で構成する「監督会」が2019年に発足しているが、会議でたびたび議題に挙がるのが、B戦に出場する選手のモチベーション維持。特に部員が多いチームでは、野球部に入ったのに公式戦の出場機会に恵まれず引退していく選手も多く、問題視されていた。「桃太郎リーグ」創設が、この問題の解決の一助になるかもしれない。監督会の 会長・戸田英樹(岡山城東高校・監督)さんに、「桃太郎リーグ創設」にあたって話を聞いた。



桃太郎リーグの創設に大きく寄与した監督会の戸田英樹会長。岡山城東高校 の監督でもある。


ーー「桃太郎リーグ」を創設した経緯について教えてください。

監督会では以前より、控えの選手のモチベーションを上げたいというテーマがありました。 そこでB戦に冠をつけて公式試合にすることで、普段の練習試合とは違う、やりがいや緊張 感が感じられるようになるのではないかと話し合い、桃太郎リーグが生まれました。もともとは昨春頃から始めようと思っていたのですが、コロナの影響で3〜5月は部活ができなかったので中止に。昨年末に改めて、今春からリーグをスタートする旨を伝えました。

ーー試合はどのような形でおこなわれるのですか?

今年度は、1リーグ3チームの総当たりです。来年度以降は1リーグのチーム数を増やすことも考えています。一日で2試合するリーグ(変則)もあれば、グラウンドの関係で3日間に分けるリーグもあります。試合日の決定などは各リーグの学校に任せています。

ーー桃太郎リーグならではのルールはありますか?

「DH制」やソフトボールのルールにある「リエントリー(再出場)」を検討しています。 DHは細かいルールがあるので、まずは試しながら、いろいろな実績を積み重ねていこうと思っています。
ルール以外ではリーグごとに個人賞を設けます。投手だと最多勝、野手だと本塁打、打点、 首位打者などですね。個人賞を設けることで選手のモチベーション向上につながると思いますし、成績を残せば自信になります。 高校生は伸びしろがあるので、このような取り組みが成長にもつながるのではないかと思っています。




ーーリーグ創設をするにあたって、ご苦労があったのではないでしょうか?

リーグの目的や日程などを議論するなかで、監督方からいろいろな考えが出てきました。な かには反対意見もありました。ですから、満場一致でスタートした訳ではありませんが、控え選手のモチベーション向上は、以前からの課題ですので、まずは始めてみようと思います。 やりながら、いろんな意見を取り入れて変えていけばいいのかなと思います。実際、声をかけた当初は15〜16校のみの参加でしたが、少しずつ参加校が増えていきましたので、実際にリーグをやっていくうちに、まだ参加していない学校にも動きがあるかもしれません。

ーーまずやってみて、そこで出てきた課題などをブラッシュアップしていく方針ですね。

リーグを開催するなかで、批判も問題点も出てくると思いますので、その都度、生徒のため に何が一番良いのかを考えて改善していきたいですね。

監督会理事をしている方にも話を聞いた。


堤尚彦 監督(おかやま山陽高校)
「数年前から、控え選手のモチベーションUPについて考えていた。きっかけは、東福岡高 校のサッカー部の特集記事を読んだこと。約280名もの部員がチームに在籍しているにもかかわらず、全員が公式戦に出場できると知り、高校野球でもB戦で公式戦のような試合ができないかと思っていた」

藤原洋造 監督(東岡山工業)
「来年度以降は、桃太郎リーグを1〜3部に分ける構想があるが、強いチームを1部にしてしまうと“勝たなければいけない”という意識が出てくる。そうなると試合に出場する選手が決まってくるのではないか? これでは本末転倒。より多くの選手に出場機会を与えること で、モチベーションアップにつなげる趣旨からは離れる気もする」

 勝ちへのこだわりは大切だが、なにを一番重視するか。今後の課題かもしれない。
 全国では、公式戦以外の試合作りに取り組んでいる学校や地域はゼロではない。例えば「Liga Futura(未来へのリーグ)」はその1つだ。開催している県は、新潟・長野・大阪。このリーグでは球数制限、(原則として)選手全員が試合に出場すること、犠牲バントの使用回数も制限などのルールが決まっている。また試合をするだけではなく、講師を呼んで野球の技術論や医療の知識、スポーツマンシップなどについて学ぶ機会も設けている。

 2年ぶりに開催された春の選抜高校野球では、適材適所にあわせて多くの選手を起用して 戦ったチームが印象に残った。開幕試合を戦った神戸国際は、1試合で15人の選手を起用。 準優勝をした明豊は、大会を通じて17人の選手が出場した。
 公式戦でひとりでも多くの選手が出場し、試合経験を積んで自信につなげてほしい。桃太 郎リーグの今後の動きに注目していきたい。




【桃太郎リーグ参加校】
公立/城東、岡山南、岡山東商業、岡山工業、東岡山工業、御津、古城池、倉敷工業、水島工業、総社南、玉野光南、玉野商工
私立/関西、創志学園、就実、理大附、学芸館、おかやま山陽、金光学園、興譲館、作陽

(文・写真/永野裕香)



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