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【長野・飯山】雪国のハンディをプラスに変えて

2021.2.5

雪国・長野県の中でも特に雪の多い飯山市に飯山高校はある。冬は4ヵ月ほどグラウンドが雪に覆われるハンディを乗り越え、2019年夏、初の甲子園出場を果たした。さらに20年夏は新型コロナで代替大会となったが、県準優勝。県内の公立校で、2年連続で決勝に進出したのは30年ぶりの快挙となる。不利と思える環境の中、飯山はいかに強豪私立校に対抗し上位争いできる戦力を整えているのか。真冬の練習を訪ねた。


冬、十分な休養が選手の身体を大きくする

地球温暖化による影響か、長野県も近年は降雪量が少ない傾向にある。それでも飯山市街地近くにある飯山高校のグラウンドには1月上旬、1メートル50センチほどの雪が積もった。例年だと12月から翌年3月下旬までグラウンドは雪に覆われ、土の上での練習はできなくなる。


深い雪に覆われた飯山高校のグラウンド。
こうした練習環境に「この方がいいのではないかと思います」と、就任3年目の吉池拓弥監督(30)は答える。飯山高校では部長時代を含め4回目の冬になる。

吉池監督は、県内でも雪の少ない上田市の出身。「冬は施設利用の関係で練習時間が短い。指導者も選手もストレスが少なく、気持ち的にも楽」と、雪深い飯山の冬を前向きにとらえる。平日は放課後の4時過ぎから2時間余り、土日も全体練習は3時間ほどで、時間としては確かに短い。「その分、飯山の子は体がどんどん大きくなる」と吉池監督。「食べる量を増やしたり、栄養指導したりすることはどこのチームもやっていると思うが、練習量が多いとなかなか体重が増えない。ただ、飯山では休養がしっかり取れ、なおかつご飯も食べられるのでひと冬ですごく体が大きくなります」という。この冬も、1月末までで体重は平均5キロ程度増えている。

飯山高校には、野球部専用の室内練習場はないが、スポーツ科学科(野球部員は6~7割が在籍)があるため、運動施設は充実している。特に体育館下にある室内ピロティーは縦横20メートル、40メートルの広さがあり、投球やマシン打撃などの練習にも使える。しかし、ほかのクラブと交替で使うため、使用時間が制限されているとのこと。練習時間は短くなるが、吉池監督は「その分、集中して臨める」と、プラスに考える。


広々として人工芝が敷かれたピロティ。打撃の練習もできる。

サブ体育館では室内用のボールを使って捕球練習。校内のいろいろな施設に分かれて効率的に練習する。


バランス感覚が養われ、体幹強化にもつながる雪上ラン

雪のグラウンドも活用する。とはいえ、多いときには人が埋まるほどの積雪があるため、使えるようにするのも容易ではない。

まず平日の放課後、投手陣が横並びに肩を組んで、外野に1周約300メートルのトラックになるように雪を踏み固めていく。「雪が深いので歩くこと自体、相当きつい」と吉池監督。その雪上トラックを使って、比較的時間がある土日のいずれかに、全員で追い抜き走やリレーをする。


ランニングの後は雪上に倒れ込む。
「長靴は重いので足腰が余計鍛えられる」と関壱星主将(2年)。踏み固めたといえ、雪面はでこぼこ。さらにゴム長靴を履いて走るため、「バランスを取らないといけないし、ただ走るだけでもいろいろな筋肉や体幹を鍛えられる」という。さらに踏み固められれば、内野でボール回しをしたり、外野ノック、時にはアメリカンノックをしたりもする。

「外野ノックは悪い足元を見ながらになるので、目切りをしても落下地点が予想できたり、一歩目が早くなったりする。飯山の外野陣は冬を越えるとうまくなる」と、吉池監督は胸を張る。エースの木村広美(2年)は「雪上ランはバランス感覚が養われ、体幹強化にもつながる」と、貴重なトレーニングと位置付ける。

ときには雪のグラウンドをクロスカントリ―スキー(歩くスキー)で滑る。雪国といえどもクロカンは未経験者が大半で、上半身を含め全身を使うためきついトレーニングになる。

また学校敷地内の雪かきは伝統的に野球部員が主体的に行っている。朝7時ごろから自主練を兼ねて作業。赴任当初、吉池監督は「すごいなあ」と感心した。関主将は「全身のトレーニングになり、体幹も強化される」と、雪国の必須作業をトレーニングの一環にとらえる。

関主将は「実戦から遠ざかる分、春先はハンディがあるが、恵まれた施設や雪上トレーニングできることはプラスになっている」と、自信を持ってシーズンインに備える。


リポート第2回 冬場の5万スイングが夏に開花 に続く

(取材・文・撮影/小池 剛)


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