関東大会決勝は、勝利した健大高崎の2年連続2回目の優勝で幕を閉じた。常総学院は7回裏、3点ビハインドから逆転するも、9回表2死から追いつかれ延長戦に。11回表、エース秋本璃空(2年)が2本の本塁打を浴び力尽きた。横浜ベイスターズなどでプレーした経験を携え今年7月に就任した島田直也監督は、ここまでの戦いを振り返り「選手たちはよくやった」と話した。2016年以来のセンバツ出場が有力視されている。
【写真】主将の田邊広大(2年)は「新しい常総学院をつくりたい」と、並々ならぬ思いで決勝まで勝ち上がった
熱かった延長11回の余韻がグラウンドにまだ残っていた。
閉会式のあとの集合写真の撮影をしているときに、ふと気がついた。
あれ? 常総学院の選手は、ユニホームが真っ黒だ……と。
優勝した健大高崎の選手は誰も汚れていない。その違いを見ただけで、ここまでの勝ち上がりが、かなり異なる登り方だったのだと、はっきりと気づかされた。
一方の常総学院。負けじと13本の安打を放ったが、9本が単打。3回、8番岡野慎之助(2年)の投手前セーフティーバントなど、泥臭く、スライディングをともなうことも多い、目の前の塁をめがけて出塁した安打ばかりだった。その結果が、汚れたユニホームに表れているように思えたのだ。
島田監督は言う。
「うちの生徒は健大(高崎)さんのように、強い体幹があるわけではない。あんなふうに(本塁打で)できるんだったらいいですけども、まだそこまでではないので……」。常総学院の公式戦本塁打数は県大会通じて9試合でゼロ。現時点での長打力の違いを認めた。しかし、そのあと「問題はそこではない」こともしっかりと強調した。
「高校野球は金属バットなので、ヒットの延長がホームランですからね。それよりもピッチャーの課題が多い。秋本はあんなに打たれた経験はなかったと思いますが、ピッチャー心理としては、どうしても真っ直ぐで勝負したいと思うんです。僕もそうでした。でも緩急があっての真っ直ぐ。ストライクを取れる変化球と、勝負できる変化球。もっと精度を上げないと全国では通じないと思いました。高低左右の配球をもっと学んでほしいですね」。自身の経験を踏まえ、バッテリーの成長を促した。
名誉ある「三塁ゴロ」。03年全国制覇、松林部長の自尊心
「ヒットじゃないのに点を取ったり、進塁させたり。気が付いたら点が入っているのが常総野球」と話すのは、松林康徳部長だ。
常総学院の4番主将として2003年夏に全国制覇を達成。センター返しを中心に単打でつなぐ選手たちを労った。
「03年夏の決勝の相手は東北高校のダルビッシュ有投手(現MLBカブス)。とにかく速かったんです。2点ビハインドの4回表。1死二、三塁で打順が回ってきたとき、低めの直球を打ってサードゴロにしました。バウンドが弾む間にホームイン。ここから打線がつながって4-2で逆転しました」
記録上は「三塁ゴロ」。しかし、ファンの記憶に残る名誉ある一打となった。
「当時は140キロでも速球派と言われた時代。いまは150キロも普通になってきている。甲子園でホームランが増えたのは、ピッチャーの球速が上がっていることも関係していると思います。しかし、地方大会の序盤戦ではコントロールのいい球速の遅いピッチャーと対戦することがありますよね。公立高校とか。そういうところに強豪校が負けるケースがあるので、島田監督も考えて打撃練習をしていますよ」
来年の春、または夏。その結果が出るのを楽しみにしている。
「秋本の投球にしろ、走塁にしろ、今はとにかく課題だらけ。ただ、県大会から半分くらいはやってきたことの成果を出せたと思う。100%出せるよう、冬にしっかりと練習します」と島田監督。
成長過程の中にあるのが高校野球。課題を克服し、春にはどんな姿を見せてくれるのか。「木内野球」の血統は、監督が代わっても脈々と受け継がれている。
▽関東大会・決勝/健大高崎9-7常総学院(延長11回)
— タイムリーWEB (@timelyweb) November 1, 2020
延長11回に1番堀江晃生が勝ち越し弾を打ち健大高崎が連覇達成。計4試合で8HR、32得点を挙げた。青栁監督が神宮大会準Vした昨年よりも上と評する打力で、創部初の日本一を目指す。常総学院は島田直也新監督で準優勝。優勝すれば20年ぶりだった。 pic.twitter.com/npCEGLQoWG
第73回秋季関東地区高等学校野球大会
▽決勝(11月1日・千葉県野球場)
健大高崎 31001000202=9
常総学院 00001150000=7
(延長11回)
(写真・取材・文/樫本ゆき)