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【慶應義塾大学】ケガを減らし実力を最大化!! ITを活用した投手のコンディション管理術

2020.5.19

テクノロジーを活用した強化策で知られる慶大野球部が、ITツールによる投手のコンディション管理に取り組んでいる。トレーニングで高めた能力を、大事な試合で存分に発揮するには? そんなテーマを追いかける竹内大助助監督に話を聞いた。


慶大野球部の新たな取り組み
ITによる投手のコンディション管理


昨年11月、東京六大学野球秋季リーグ戦で3季ぶりに優勝、全国から強豪が集う明治神宮大会でも19年ぶりに優勝を果たした慶應義塾体育会野球部。ドラフト会議でも4選手が指名を受ける輝かしいシーズンとなった。

近年の慶大野球部といえば、投球の回転数や回転軸、打球の速度や角度などを計測できる機器をいち早く導入するなど、科学的なトレーニングで強化に努めてきたことでも知られているが、昨年は新たな取り組みも行っていた。それは投手のコンディショニングを目的としたITツールの導入だ。昨年2月に就任した竹内大助助監督が説明する。
「2018年の秋季リーグでは、ケガや調子を落とす投手が多く出て、一部の投手に負荷がかかってしまいました。その影響で彼らも調子を落としていく悪循環に陥り、優勝を逃したのです。それを就任時に聞き、投手のコンディションを整え、できるだけフレッシュな状態で公式戦期間を戦い抜く手立てが必要だと考えたんです」。

竹内大助
1990年生まれ、愛知県半田市出身。現役時代は左投げの投手。中京大中京で2008年春の選抜に出場。卒業後は慶應大学に進みリーグ戦で22勝、優勝も2度経験した。その後はトヨタ自動車野球部に6年在籍。2019年より母校・慶大に戻り助監督を務めている。

「今日は調子がよかった」を再現するためのヒントが得られる

様々なスポーツで大きな成果を挙げたことで知られる企業が開発したシステムを選定し、チームに実際に導入したのは昨年7月。以来、忙しい選手たちへの配慮を行いながら、チームへの浸透を図ってきた。
「その日、どんな練習をどれくらいの強度で行って、どこにどれくらい疲れや張りを感じているのか、睡眠はどれくらいとったかなどをスマートフォンで選手たちに入力してもらっています。これを毎日続けると体調の上下動のパターンがおおまかにわかってきます。

それを参考にすると、試合やブルペンで投手がいい球を投げていたときに『ああ、今日は調子がいいな』で終わらず、どうやってそこに至ったかを探ることができる。何をして、どんなタイミングで疲労が出ていたかなどを調べることで、同じような投球をするためのヒントが得られると考えているのです」。

ツールを導入し、投手たちそしてコーチングスタッフらが体調変化を細かく把握することで故障者が減り、負荷の分散が可能となった。昨年の秋季リーグではチーム防御率は前年秋の3.64から1.73へと改善し、投手力はチームの大きな強みとなった。
「まだ試行錯誤の段階なので、ツールのさらなる活用法を選手と考えていきたいですね」。

竹内助監督は、選手時代から自分の体調について細かくノートに記し、自分のコンディションに意識を向けていたという。
「高校時代はなかなかそうもいきませんでしたが、社会人時代はそのノートを見せ自分なりの調整をさせてもらったこともあります。高校生の頃から自分の身体がどんな状態にあるのかに目を向けるクセができれば、ケガ防止にもつながるはず。簡単なメモからでもいいので、始めてみてはどうでしょうか」。


竹内助監督が現役時代に書いていたノート。毎日の自分の身体の状態について細かく記録。こうした経験が今回の取り組みにつながった。

慶大投手の投球回の配分と防御率


2018年は故障者が多く出た結果、1人の投手に多くの負荷がのしかかった。2019年は、投手陣のコンディションに配慮し、負荷を分散することに成功。防御率は3.64から1.73へと大きく改善した。


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