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【仙台育英】キャッチャーを「継捕」するという考え方と独自のキャッチャー育成法

2020.1.7

仙台育英・須江航監督は、秀光中等教育学校監督時代に独自のキャッチャー育成法を取り入れてきた。練習試合や紅白戦で、ベンチからトランシーバーでキャッチャーに配球の指示を出す“インカム野球”である。試合中、監督とキャッチャーがリアルタイムで会話し、配球を考えていく練習法は仙台育英でも採用。これまでにないキャッチャー起用法で選手の特性を伸ばすのが狙いだ。


新しい考え方だ。スポーツライター・大利実氏は「高校野球継投論」(竹書房)の中で仙台育英の「継捕」、つまり1試合で複数のキャッチャーを出場させる采配を記事で紹介している。

【「継投」があるのなら、「継捕」があっていい。ピッチャーをつなぐのと同じように、キャッチャーをつないでいく。それを本当に実践して、甲子園に出場してきたチームがあった】(「高校野球継投論」より)

仙台育英は昨夏3人のキャッチャーを使い、宮城大会6試合中5試合でキャッチャーをつないで甲子園出場をつかんだ。今夏ベスト8入りした甲子園でも、須江監督は木村航大(背番号2、1年)、猪俣将大(背番号12、2年)、小野寺真輝(背番号15、2年)の3人のキャッチャーを選手登録し、全4試合で木村―猪俣の「継捕」を行った。笹倉世凪-木村の1年生バッテリーで臨んだ初戦(飯山戦)は、2人が甲子園初出場とは思えぬ落ち着きで投打に活躍したのが印象的だった。両選手とも秀光中時代から須江監督の教えを受けている。練習試合や紅白戦で、ベンチの須江監督からトランシーバーで配球の指示を受ける“インカム野球”で鍛えられてきた選手だ。キャッチャー陣にインカム野球の真意について聞いた。

「最初は混乱した」「後で言われるよりわかりやすい」

「最初、中1でインカム野球をしたときは、めちゃめちゃ混乱しました。試合中の自分の声と、須江先生の声とかごちゃごちゃになって、うまくできなかったです。でもだんだん慣れていき、失敗もして、基本的な配球術が身につきました。そのうち自分の意見も伝えて、その意図が伝われば採用してもらうようになりました」。
12歳の時から鍛えられてきた木村は最初の苦労と身についた経験について話した。そして「中学生の配球なんて、最初は意図なんてないので(笑)。インカムでセオリーを詰め込まれるのはいいと思う」と正直な気持ちも打ち明けた。指示通りの配球でも、抑えることが経験値になる。打たれて、落ち込んで…の繰り返しだと、理解力の未熟な中学生では時間がかかる。須江監督は中学生の性質を考えた上で、インカム野球を採用してきた。

仙台育英でも、実戦練習でこれを取り入れている秀光中以外から入学したキャッチャーに感想を聞いてみると…。
「今年の2月に4チーム編成の部内リーグ戦を行ったのですが、この時にインカム野球を経験しました。1球1球教えてくれることもあれば、自分の意見をまず言わせてそこからアドバイスをくれることもある。試合中、須江先生の助言をベースに選択肢は3つも4つももらえるので、いろいろなパターンの配球を試すことができます。試合が終わってから『あの配球はこうだった』と言われるより、その場で言ってくれるほうが頭に入ります」(吉原瑠人、2年=楽天シニア出身)。
「インカム野球はやったことがなかったので最初ビックリしました。大会前の紅白戦は(吉原)瑠人さんたちが相手チームを分析したデータが元になっているので、そういうことも考えると配球に対する考えもよりリアルに考えられます」(小野天之介、1年=楽天シニア出身)。
高校バージョンにカスタマイズされたインカム野球は、秀光中出身でないキャッチャーたちにも影響を与え、大きなモチベーションとなっている。


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