千葉県立検見川高校の夏の大会直前の練習レポート。前編では限られたスペースを有効に使って多くのメニューを効率良くこなし、またより実戦に近い練習について紹介したが、後編では酒井光雄監督に強豪私立を相手に勝機を見出すための工夫について聞いた。
酒井監督は市立船橋、日本体育大でプレーした経験を持ち、検見川に赴任して5年目となる。前編でも触れたが酒井監督の就任後、2017年には春夏連続でベスト4に進出し、木更津総合、習志野、中央学院といった県内の強豪相手にも常に善戦している。強豪相手にここまで戦える背景には、とにかく細かい野球ができるところにポイントがあるようだ。
「うちはとにかくサインの種類もバリエーションも多いです。ヒットエンドランでも何種類もパターンがあります。そのサインも毎試合変えますし、試合の中で3回ごとに変えるようなこともしています。サイン盗みが話題になっていましたけど、うちは試合中にも変えるので見られても意味はないと思いますね。選手は最初覚えるのは大変だと思いますけど、勉強の偏差値も高い子たちですからすぐに慣れてくれます。それはうちの強みかもしれませんね」
エンドランやサインのバリエーションの多さ以外にも細かい部分のプレーにこだわっていることは多い。時にはベンチからのサインだけでなく、グラウンド上の選手達だけで動くようなプレーも少なくないという。
「ランナーが一、二塁のケースなんかは、相手の配球が分かればランナー同士でアイコンタクトをとってダブルスチールをしかけるようなこともよくあります。
あと徹底しているのはファールゾーンのフライの時のタッチアップ。ファールフライの時って守備側が安心していてベースカバーが疎かになることが多いんですね。一塁にランナーがいて、一塁側のファールフライが飛んだ時とかファーストベースに誰もいないこととかがよくあります。だから一塁ランナーはスタートを切って、多少大きく離塁しても余裕で戻れます。それで相手がもたついたり、悪送球したりしたら当然次の塁に進めますし、一、三塁の時なんかだと相手が挟殺プレーに入るのが遅れて、その間に三塁ランナーがホームインできることもある。ファールフライでも無駄にせずに次に繋げることができていると思います」
試合中の細かいプレーについてまずは触れたが、チームの編成についても当然工夫している。現在は複数投手制が珍しくないが、検見川も多くの投手がおり、またベンチ入りした選手全員で戦うというのもポイントだ。
「今年のチームだと8人投手がいます。右も左もいるしサイドスローもいる。ピッチャーができそうな選手はどんどん試合で投げさせますし、バリエーションは常に豊富にしていますね。その中で対戦相手に合わせて起用しています。極端に言うと対公立用と対私立用のピッチャーがいます。ある程度スピードのあるピッチャーは公立高校は抑えられても私立だと打ち頃ということもあるじゃないですか。逆に速いボールに強い私立は意外と軟投派に苦しんだりする。次の対戦相手が見に来ているのも分かったうえで色々起用を変えたりもします。
あと一つのポジションだけに固定せずに、色々守れるように練習しています。例えば外野としては肩が弱くて1点やりたくない時には厳しい選手も、内野が守れればベンチに下げなくても一時的に内野をやらせて残すことができる。打順も先制点が欲しい時などは、バットに当てるのが上手い2番タイプの選手をランナー三塁のチャンスで回ってくることが多い5番に入れて、エンドランでまず1点とってしまう。そんな使い方もしたりします」