二強の牙城を崩す 勝負のシーズンが始まる
2017年の7月から監督に再就任し、チームは黒坂監督が想像していた以上のスピードで成長している。エースの米山魁乙は関東を代表する左腕としてプロのスカウトから注目される存在となり、リードオフマンの千田泰智や、四番の渡邉翔大など下級生ながら昨年の夏を経験した選手も多い。昨年から寮生を迎える環境も整い、新1年生には県外からも有望な選手が集まった。吉野創士もその一人だ。関東の名だたる野球部からの誘いを受けながらも昌平を選んだ彼は「黒坂監督の自主性を重んじる指導に惹かれました。昌平でこそ一番自分が成長できると思います」と笑顔で話す。

「個々のポテンシャルではまだまだ花咲徳栄さんに勝てないかもしれないですが、選手の考える力は日に日に増し、知識や技術に関しては引けを取らないと思います。僕も大学、社会人と高いレベルでプレーをさせていただきました。教えていることには自信も持っています。駒澤大学時代の太田誠監督からは1球、1プレーに対する勝負のこだわり、シダックス時代では野村監督から教わった1点の取り方や、勝つために必要な組織力の精度は上がっています。あとは自分たちを信じ、堂々と戦うだけです」
そう語る黒坂監督の表情からは現チームの完成度の高さが読み取れる。関西遠征ではセンバツ優勝経験のある奈良県の強豪智弁学園にも勝利した。平成の埼玉県の高校野球をリードしてきた花咲徳栄と浦和学院。二強の牙城を崩すシーズンはすでに始まっている。
後編では昌平野球部の練習や、特徴的な取り組みを紹介していきます。
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