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激しいチーム内競争のメリットとデメリット|甲子園優勝監督の失敗学(仙台育英・須江航監督)

2025.10.16

高校野球の頂点に辿り着いた名将たちにも、失敗や後悔、苦い敗戦があった——。昨年発売された『甲子園優勝監督の失敗学』(KADOKAWA)の中から、高校野球指導者の方に参考となる部分を抜粋して紹介します。今回は仙台育英・須江航監督の章の一部を紹介します。


仙台商に敗れたのが7月17日。早すぎる夏の終わりとなった。

ここからの流れとしてよくあるのが、翌日に改めてミーティングを行い、3年生の頑張りを労ねぎらい、グラウンドや寮の掃除をして、退寮の準備をする。簡単にまとめてしまえば、
「今までお疲れさま。ありがとう。それぞれの道に向かって、頑張っていけよ」ということだ。

だが、須江監督が取った行動はまったく違うものだった。

敗れたばかりの3年生に、「仙台育英で学んできた野球を後輩たちに伝えてほしい。7月いっぱいが、自分たちの甲子園だと思って戦ってほしい」と伝え、7月31日まで練習に参加することを求めた。

そこで、監督として3年生にお願いしたことが2つあった。ひとつは、翌年のセンバツを目指す下級生と紅白戦を行いながら、仙台育英の野球を教え、伝えること。須江監督はこれを「伝承試合」と名付ける。名前を変えるだけで、まったく違う重みが生まれる。

毎年7月に入ると、夏のメンバーを外れた3年生と下級生の「伝承試合」が組まれる。県大会が第一試合であれば、球場からバスで戻ってきて、午後から2試合。3年生にとっては、甲子園のベンチ入りをかけた試合であり、真剣勝負の場。本気の戦いだけに、下級生も学ぶことが多い。

もうひとつは、2021年夏からスタートした新チームの歩みを振り返り、「良かったこと、改善してほしいことなどをチームに向けてプレゼンしてほしい」というお願いだった。監督が良かれと思って取り組んできたことも、選手たちからすれば、「そこはほかのやり方があったんじゃないですか?」と感じたことがあるかもしれない。須江監督としても、〝生の声〞を知りたかった。

そこで、率直な意見として出たのが、「チーム内競争」に対する向き合い方だった。
「1年中、熾烈なメンバー争いが行われているため、自分のプレーやフォームに落ち着いて向き合う時間がなかなか取れない」
「大会ごとにメンバーが入れ替わっていたので、試合中の声かけやグラブ渡し、水分補給など、細かいところでのサポートにズレが生じることがあった」

近くで3年生のプレゼンを聞いていた須江監督も、「たしかにその通り」と頷ける部分があった。


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