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【高校球児のための大学野球部ガイド】東京大学硬式野球部を紹介!

2019.4.8

日本でも最も古い歴史を持つ大学野球チームの一つである東京大学(以下東大)硬式野球部。東京六大学リーグでは全国から有望な選手が集まる他大学の前に2010年秋から2015年春にかけては94連敗を喫するなど苦しい戦いが続いていた。しかしその後は2016年春には3勝、2017年秋には15年ぶりに勝ち点を獲得するなど善戦を見せている。選手の高校時代の実績などでは大きく劣りながらも、全国トップレベルのチームを相手にどのようにして戦っているのか。そのヒントを探るべく浜田一志監督にお話を聞いた。


受験勉強で鍛えられたゴール設定と戦略の立て方

――他の大学は高校時代から有望な選手が揃い、一方で東大は厳しい受験勉強をクリアした限られた選手しか入学できない。個人の力の差はかなり大きいと思いますが、そんな中でどう戦っていこうという風にお考えですか?
浜田監督「その年の戦力によっても違いますが、やはり優先しているのは守備力です。力が劣る戦力で勝つためには自滅をしないということと、長打を打てるのが必要条件です。高校野球を見ていてもコールド負けするようなケースでも、3回くらいまでは接戦ということが多いです。その後に打者が一回りして投手が慣れられて打たれるパターンと、エラーから自滅してビッグイニングを作られて相手が伸び伸びと野球をやって、あれよあれよという間に点差が開くパターンがあります。

後者の方を防ぐためには何が必要か? それは(投手も含めた守備の)安定性です。そして安定性を手に入れるためにはどうすれば良いかというと反復練習です。同じことを繰り返すことで安定性が増します。同じことを繰り返すためには何が必要か? それは体力です。例えば野手が壁当てして捕球練習を100回やって下半身がガクガクになる選手と500回できる選手では、500回できる選手の方が動作は安定します。体力トレーニングをする目的はそこにあると思います」

――一方で長打力という話ですが、その目的と方法としてはどうでしょう?
浜田監督「どんな一流のピッチャーでも怖いのは『ひょっとしたら』という感覚だと思います。ピッチャーが一番嫌なのはホームランを打たれることです。芯でとらえても外野の頭を超えないような選手は全く怖くないですよね。芯で当たったらひょっとしたらホームランにはるかも、と思わせるだけのオーラが出せるだけでも違うと思います。

長打を打つためにはインパクトの後の最後の押し込みが必要です。そのためにはやはりパワー、ウエイトトレーニングになりますね。鍛えてもなかなか難しいのがセンスと言われる部分です。グラブさばきやミートのセンス。あとは試合勘のようなものはなかなか大学生から練習で身につけるのは難しいです。でもトレーニングで力をつけて相手投手に『ひょっとしたら』と思わせることは可能です。そうすることで一流の投手であっても、プレッシャーを感じて力を出せないような状態に持っていく、そういう意味での長打力ですね」



――2017年秋にはリーグでも3位の8本塁打が出るなど、そういう意味では長打の面でも監督の狙った効果は出てきていますね。
浜田監督「トレーニングでパワーをつけたというのが一番目にあります。あとは相手投手と捕手の研究、分析も大きいと思います。分析リーダーは決めていますが班にはしておらず、全員が分析するようにしています。今は全員がノートパソコンを持っていて映像もデータも見ることができますから。分析と言っても難しいことばかりではなくて、相手投手の映像をジーっと見ているだけでも大きいです。勉強に例えると教科書は開いて、試験範囲は分かっている状態ですね。勉強ができない子はまず教科書のどこが試験範囲かも知らないことが多いですから。じっくり投手を見て、どんな投手かイメージできているだけでかなり違うと思います。だから控えメンバーだけではなく、レギュラーの選手も一緒に分析にかかわるようにしています。

高校球児にアドバイスするとすれば、高校野球の場合はキャッチャーの癖に関しては監督さんの癖が出ることが多いですね。どういうパターンで攻めてくるかは監督が指示していることも多いので、そういうことをつかむことは重要だと思います」



――厳しい受験勉強を勝ち抜いて入学してくるわけなので、最初は体力的に落ちている選手もやはり多いですか?
浜田監督「うちの野球部は2/3は浪人生なのでそれはありますね。入部して最初の1か月はリハビリですね。リハビリ、トレーニングを経て野球をするというイメージです。
高校生はまだ体が成長期で細胞分裂しているので再生も早いですけど、大学生で20歳くらいになると成長期は終わっています。だから少し再生には時間がかかりますけど、体ができている分、負荷をかけると筋肉が大きくなりやすいというのはあります」

――他の大学に比べて東大野球部の強みと言えるような部分はどこになりますか?
浜田監督「ゴールの設定とそれに対する戦略の立て方というのは上手いと思います。受験勉強でそういうことを経験してきていますから、野球にも応用が利く部分も多いですね」


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