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【二松学舎大附】2年連続夏の甲子園出場、チーム内の競争が好循環を生み出す

2019.3.4

帝京や関東一など強豪ひしめく東東京の中で、昨年、一昨年と2年連続夏の甲子園に出場している二松学舎大附。昨夏の甲子園では1年生捕手山田将義にスタメンマスクを被らせるなど、毎年下級生の活躍が目立つ。東東京屈指の知将市原勝人監督にチーム作りについて話を伺った。


部員全員にチャンスがある環境
旬を逃さない選手起用がカギ

昨夏の甲子園を経験したメンバーが9名残っている二松学舎大附。この数字は昨年の代の登録メンバーの半数が1.2年生だったということを意味する。シンデレラボーイと話題になった山田将義に代表されるよう、キャプテンの右田稜真やエースの海老原凪など、下級生の頃からレギュラーに抜擢され、チームの主力へと成長する選手が多い。しかし、市原監督は「特に変わったことではありません」と言う。



「来年、再来年のことを考えて下級生を使うといった意図はなく、チームが勝つためには能力の高い選手が起用されるのが当たり前だと私は考えています。ただ、それには“部員全員が平等の立場”でなければいけません。一学年20人前後という部員数は、指導者の目が行き届き、かつチャンスを与えられる限界の数字です。私の現役時代は『1年生=3年生のお手伝い』という立場でしたが、今は時代が違います。学年に関係なく良い競争がチームを強くすると思っています」。

大江竜聖(巨人)や今村大輝、三口英斗が“1年生トリオ”として夏の甲子園の舞台に立ったことは記憶に新しい。だが、スカウティングを担当する立野淳平部長も「チームの弱い部分を1年生が上手く埋めてくれた部分がある」と語る。競争が前提にあるということは下級生だけではなく、上級生にも最後までチャンスが残っていることを示す。その象徴が引退した3年生岸川海だろう。東東京屈指の速球派は下級生の頃から“次期エース”と期待される逸材だった。

「自分の投げるボールに自信があったからこそ、彼には心の弱さがありました。だから最後の夏の予選も背番号は17番。しかし、予選を戦っていくうちに今まで見たことのない良い表情をするようになり、堂々としたピッチングをしてくれました。成長を感じ、夏の甲子園では初めて1番を与えました。3年生だって最後まで諦めなければチャンスが転がり込んでくることを体現してくれたと思います」。

気持ちが乗れば驚くような力を発揮するのが現代の高校球児の面白いところと市原監督は笑顔で言う。今が“旬”の選手を見逃さないためにも、3学年全ての選手をつぶさに観察する眼力があってこそなせることだ。

強いチームに対抗するための策 左投手育成のススメ



昨年の12月に行われた東京都選抜の海外遠征ではピッチングコーチを任されるなど投手育成に定評のある市原監督。自身も現役時代には選抜準優勝を経験した左投手ということもあり、大江を筆頭に、昨年は市川睦(日本大学)、今年は海老原凪など毎年東京を代表する左投手を輩出している。

「右投手で背が大きくて、ストレートが速い投手は全体的な割合も多く、ある程度バッターも対応できます。でも、良い左投手との対戦経験は少ない。左投手にこだわるというより、試合に勝つことを考えると『また今年も左投手になってしまった』いう感じですかね(笑)」。

キューバ遠征でも東海大菅生の中村晃太郎や、東亜学園の細野晴希といった左投手が結果を残した。彼らは驚くようなストレートは持っていないが、どちらも制球が良く変化球にキレがある好投手だ。

「打者に力負けをしない球を投げられる投手が理想に違いはありません。東京都選抜でいえば井上広輝(日大三)がそうでしょうね。ただ、あの領域まで到達する投手はごくわずかです。でも左投手なら、球にそこまで力がなくてもある程度通用します。特にチェンジアップやシンカーといった落ちる球は有効的ですね」。

井上のコンディションが万全でなかったこともあるが、中村は第1戦と4戦の先発、細野はチーム最多となる3試合を投げブルペン陣を支えた。

「相手が強ければ強いほど左投手が有利になるケースが多いです。甲子園で大阪桐蔭のような強いチームに勝つことを目標とすると、良い左投手が一枚いることは武器になると思います」。


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