滋賀県内のみならず、京都や大阪などからも甲子園を夢見て近江高校の門をくぐってくる生徒は毎年多い。野球留学に関しては世間的に否定的な意見を唱える者も多いが、多賀監督ははるばる近江にやってくる子たちを心から歓迎している。
「もちろん、地元の子を大事にしたい思いはありますが、県外から甲子園に行きたいと覚悟を決めてやって来る子は、それ相当の気持ちの強さを持っているので練習での姿勢が違います。レギュラーになって試合に出たいという意識が人一倍高い傾向がありますね。ただ、僕が常に勧誘している訳ではないんですが、県外から来てくれる子は過去にウチに通っていた子との繋がりなども多いんですよ」。
15年前に完成したグラウンド後方にある野球部寮は大浴場なども完備され、生活する遠方の選手たちにも好評だ。
ブルーのユニホームに憧れ、毎年他府県から様々な“顔”を持った選手が集まってくるが来年は今年の甲子園を見て大きな野望を抱いた選手がどれだけ集まってくるだろうか。チームは今年の春、夏の甲子園はいずれもサヨナラ負けを喫した。夏の最後の”悲劇のヒーロー“となった現エースの林優樹は、あの試合の悔しさを片時も忘れたことはない。
「今度は自分が投げて、抑えてみんなで甲子園に行きたい」と林はランニングメニューでも率先して先頭に立っていた。林だけではない。女房役の有馬諒も、三塁のポジションからあのシーンを前に呆然と立ち尽くした見市智哉も、隣にいた土田も—。
あと1歩で涙したあの舞台に戻るために、今は全員が同じ方向を眺めながら鍛錬に励んでいる。(取材・写真:沢井史)
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