「12月に10日間、体力的にかなりきつい合宿をやったのですが、その前の夏と秋に悔しい負け方をしたということもあって選手が自分たちで追い込んでいたんですね。その姿を見て、選手たちを信じてみようという気持ちになりました。それまではどうしてもこちらの意図を押し付けていた部分があったと思います。夏の最後の苦しい場面を乗り切るには選手たち自身の意思で動けないとだめなんじゃないかなと。夏の山形大会、2試合連続でサヨナラホームランで勝ったのも選手たちが取り組んできたことに自信を持って、自分たちの考えでプレーできた結果だと思います」
この日は秋の大会が近いということもあって、実際に走者をつけてのバント、ヒットエンドランが中心のメニューだったが、小泉監督が語るように個人の技術ではなくチームとしての決め事の確認が中心だった。攻撃面ではバントの時の立ち位置、ランナーのリードの幅も細かく決めており、守備でもバント処理は迷ったらファーストに投げるなどの指示を徹底して行っていた。
ヒットエンドランではワンバウンドは振らない、というのも一つの決め事であるが、それに関してチームカラーを象徴する場面があった。ワンバウンドになるかどうか際どいボールを見逃したケースがあったのだが、見送った選手は小泉監督に対して「今の高さはどうしますか?」と質問したのだ。それに対して小泉監督は少し考えながらも「(明らかにワンバウンドではない)迷うようなケースは打とう」と指示を出していた。何気ない会話に感じるかもしれないが、高校野球の現場においてこのように選手が監督に質問して、対話が生まれるというケースは珍しい。このような姿勢が浸透しているからこそ、実際の試合でも選手が自分で考えてプレーすることができるのだろう。
夏の甲子園では惜しくも初戦で敗れたが、新チームにはその敗戦を経験した選手も多く残っている。小泉監督は「旧チームの主軸がそのまま新チームでも活躍できるわけではない」と話すが、戦力的には楽しみな布陣である。2季連続の甲子園出場、そしてかつての選抜ベスト4を上回る成績に向けて、今後の羽黒の戦いぶりにぜひ注目してもらいたい。(取材:西尾典文、写真:磯貝琢哉)
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