夏の甲子園を沸かせた2年生世代の中でも、3試合で15打数9安打(打率6割)、2試合連弾と大爆発した明豊の浜田太貴の勝負強さはとりわけ輝きを放った。甲子園での2発を含めすでに通算27本塁打を記録している右の大砲に、打撃力向上の秘訣を聞いてみた。
甲子園直前に掴んだ、内から最短で捉えるイメージ
――甲子園で6割という高打率を残しました。状態の良さは自覚していましたか?
「はい。ボールが良く見えるようになってきましたね。選球眼がいつも以上に冴えたので、見極めがしっかりできていました。ボールを長く見ることができるようになって、余裕が出てきましたね」
――もともと飛距離には定評がありました。その飛距離を生み出す技術力が備わったことで大分大会の3本塁打、甲子園の2本塁打に繋がったのではないでしょうか?
「監督の指示で通常より4cm長い87cmのバットで練習するようになったことが大きかったですね。内から最短で捉えるイメージを持って、コンパクトに振っていけるようになったので、内角の厳しいコースにも上手く腕をたたんでアプローチすることができたのです。じつはこの感覚を掴んだのって、甲子園初戦の本当に直前だったんですよ」
――明豊は7種類のティーで打撃力を磨いているといいます。数ある種類の中で、浜田選手がとくに効果を実感しているティーは?
「逆手打ちですね。つまり、通常とは逆の“利き手の右手を下に、左手を上にバットを握る”というティーです。これを続けることで、インコースの球でも体が開かずに、バットを最短で出す感覚が磨かれてきました。最大の効果としては、やはり体の開きを矯正できるということでしょうね」
――スイング(素振り)はどれぐらいの量をこなしているのですか?
「素振りはフルスイングでの感触を確かめるものだと思っています。自分は数も時間も決めていません。振りたい時だけ、納得いくまで振るというスタイルです。自分がやりたくない時には、いくら振っても何も身に付かないので。あくまで自分のペースで振ることが大事。たとえ3スイングだけでも“これだ”というものを掴めたり、満足できればそこで止めますよ。ただ、多くても30本ぐらいですかね」
――そんな浜田選手は典型的な「天才型」で、いわゆる「反応で打つ」タイプの打者だと思っていましたが、配球の研究にも取り組んでいるそうですね。
「試合中に相手バッテリーの傾向をメモに書き残すようにしています。それを読み返すと、ある程度は相手の配球が読めてきます。甲子園では配球を読むことに関してもじつに冴えていました。決して来た球に反応していただけでは、甲子園であれだけの数字は残せなかったと思います」
――甲子園の後、新しい打法にも挑戦しています。
「足の上げ方を変えてみました。以前は摺り足だったものを、甲子園の後から足を上げてタイミングを取るやり方に挑戦してみようかと。また、トップの位置を少し下げたのですが、これは明らかに合っていなかった。上も下もいろんなことを試してみましたが、今では高い位置でトップを作り、摺り足で割れを作りながらタイミングを取るという甲子園の時のスタイルに戻しました。一番しっくり来るということではなく、考えすぎることをやめようと思ったのです」
――今後、ますます注目される中で相手の攻めも厳しくなってくるでしょう。
「甲子園であれだけの成績を残せたので、今後は自信を持って打席に立つことができるでしょう。秋からは4番を任されているので、チームに勝ちをもたらす一本、一打を意識してフルスイングを続けていきたいです」
(取材・撮影:加来慶祐)