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【コラム】見逃してませんか!?試合前のシートノック

2017.9.13

試合が始まる前に必ず行われるシートノック。このシートノックによってそのチームの守備力や弱点などの情報が得られることも少なくない。そこで今回はそんな試合前のシートノックにスポットライトを当ててみたいと思う。



大阪桐蔭のシートノック(内野)

意外に決まった型はない??

今回シートノックに対するあれこれを紹介するにあたり、高校野球の春の地区大会、夏の地方大会、夏の甲子園大会の延べ68試合、136チームについて調査を行った。調査した項目は主にどんなメニューをシートノックで行っていたかということと、シートノックでどれだけミスが出ていたかについてである。

調べ始めてみてまず気づいたことは、同じメニュー、同じ流れでシートノックを行うチームはなく、それぞれ細かなバリエーションがあるということだ。そこでまずは代表的なバリエーションについて紹介する。

最初に行うのはボール回し?内野ノック?それとも・・・

「○○高校、ノックにお入りください。時間は7分間です」というアナウンスが流れるとベンチ前に整列していた選手がグラウンドに走り出していく。そこからシートノックが始まるわけだが、まず最初に何を行うかということにも実に10ものバリエーションが見られた。最も多かったのがボール回し。136校中112校、実に8割以上のチームがボール回しからノックをスタートしていた。

ただこのボール回しでも様々な違いがある。
よく見られるのが内野手と捕手がベースにつき、キャッチャーから時計回りの方向へ2周、反対方向に2周というものだ。そのあとにキャッチャーとセカンド、ファーストとサードの間の長い距離を投げるものを取り入れているチームも多い。

仙台育英(宮城)おかやま山陽(岡山)など8校はボールを2個使って行い、古川工(宮城)はボール回しの中に走者の挟殺を想定した動きも取り入れていた。
早稲田佐賀(佐賀)北豊島工(東東京)は最初の2分ほどをボール回しに費やしており、送球を重視していることがうかがえた。

ボール回しの次に多かったのはファーストへ送球する内野ノックで、10校が最初に行っていた。
他と全く重ならないメニューから始めていたのは4校。下関国際(山口)はキャッチャーのセカンド送球、浦和学院(埼玉)は投手のバント処理、明桜(秋田)はホームへ返球する外野ノックが最初のメニューだった。そして最も個性的だったのが宇都宮清陵(栃木)。ノックが始まるとボールを使わず、内野手が捕球と送球をいわゆる“シャドー”で行う動きからスタートしていたのだ。最初に何を行うかだけでもシートノックの奥深さが分かっていただけたのではないだろうか。


大阪桐蔭のシートノック(外野)

ゲッツーのタイプと投内連係

ボール回しなどの動き意外のいわゆるノックは内野手から始まることが多い。一般的なのはファーストへの送球を3本程度行い、その後にゲッツーというものだ。

ただよく見ているとゲッツーにも大きく二つのバリエーションがあることに気がついた。

・サード、ショート、セカンド、ファーストという順に一連の流れで行うケース
・サード(5-4-3)とショート(6-4-3)をまとめて繰り返した後にセカンド(4-6-3)とファースト(3-6-3)を繰り返すケース

前者を「一連型」、後者を「セパレート型」とすると一連型が79校、セパレート型が55校とその数は拮抗していた。時間を効率的に使うのであればセパレート型の方が有効であるように思われる。その一方で宮城の連合チームと東海大高輪台(東東京)はゲッツーを行っていなかった。連合チームは部員数の問題と考えられるが、東海大高輪台はあえてファーストへの送球と全体へのフライ練習に長い時間を割いていたように見えた。

シートノックの時に投手はノッカーへのボール渡しをしていることが多いが、中にはノックに参加しているケースもある。浦和学院は最初に投手のバント処理を行っているということには触れたが、136校中17校が投手も参加して行っていた。珍しかったのは小林西(宮崎)。投内連係が終わると投手が引き上げるケースが多い中、小林西は外野も含めた全体へのフライの時まで投手が残って参加していた。

まだまだある!様々なバリエーション

甲子園で最も独自の方法でシートノックを行っていたのが波佐見(長崎)
ボール回しは行わず、内野のファーストへの送球とゲッツーを行った後は投手もマウンドに立ち、実戦を想定したノックを繰り返していたのだ。普段の練習ではゲーム形式のノックはよく見かけるが、試合前のノックでここまで実戦を想定したものを行うことは珍しい。

二遊間で少し変わったことを行っていたのは秀岳館(熊本)
ショートはエンドランを想定して、一度ベースに入る動きを行った後にノックを受けていた。またゲッツーではない場面でも二遊間のゴロに対してセカンドが逆シングルで捕球した後、ショートにグラブトスする練習も行っていた。あらゆるケースを想定した高度なノックだと言えるだろう。

最もメニューが少なかったのが日本文理(新潟)
外野へのノックはホームへの返球を2度行っただけで、セカンドやサードへ送球する連携は一度もなく、終了時間の1分前には終わっていた。

シートノックで最も注目が集まるのはキャッチャーフライだが、意外に打たずに終わるケースが多く136校中キャッチャーフライを行っていたのは35校だった。中でもかなりの高さで打ち上げるのは横浜高校(神奈川)の平田徹監督だ。渡辺元智前監督もノックの達人だったが、平田監督もよく似たフォームで高々と打ち上げている。神奈川のファンはそのことをよく知っており、キャッチャーフライで歓声が上がることも少なくない。

一言で「シートノック」といっても、そこには学校としてのカラーや監督の目指す野球の方向性が現れる。試合前の「シートノック」にぜひご注目いただきたい。(文:西尾典文)