宮城県で開催された春季東北大会決勝は八戸学院光星(青森)を1-0で破り、4年ぶり12回目の優勝を果たした。エースの長谷川が抜群の安定感を見せ、ナツタイの前哨戦を最高の結果へ導いた。
4年ぶりに制した春季東北大会!
震災後初、12年ぶりに宮城で開催された春季東北大会は、仙台育英が優勝した。秋に続く2季連続の東北大会制覇となり、閉会式では阿部徹東北地区高野連会長から「今年こそ白河越え(全国制覇のこと)を果たせるよう頑張ってほしい」とエールが贈られた。周囲からの期待を感じている選手たちも表情を引き締め、場内を一周。「俺たちの次の舞台は全国だ!」。そんな決意が伝わる行進だった。
「全員の力を合わせた結果、優勝することができてよかった。良い形で夏を迎えられる」。冷静さを含めた笑顔でこう話した西巻主将。今大会は、県大会準決勝で東陵に敗れ「宮城3位」からの出場。そのことが、選手全員を原点に返らせるきっかけとなった。

優勝の立役者はエースの長谷川拓帆だ。2回戦(聖光学院)、準々決勝(弘前聖愛)、決勝(八戸学院光星)で完投し、わずか2失点。準々決勝は、無四死球と、課題だった制球難を克服した形となった。リードしたのは背番号2の渡部。「センバツでは自分のミス(牽制悪送球)で負けてしまったので、ずっと悔しさがあった。長谷川の良いところを引き出すリードで、コンビネーションを高めていきたかった」と話し、春からの成長をしっかりと見せた。
長谷川も「真っ直ぐが思うように行かないと球が荒れることもあったけど、今大会は力を抜いて投げることができた」とバッテリーの信頼感に自信を深めた。覚醒したバッテリーの力で、3位からの「下剋上」を見事果たした大会となった。
意地を見せたクリーンアップトリオ!

センター返しを中心に、広角に長打を打てる好打者。フルスイングがモットー。深い外野の前にポトリと落とすバットコントロールも巧みだ。

どんな球にもミートさせ、抑えることが難しい四番。打撃の中心選手であると同時に、投手としてもキレのある速球で打者と真っ向勝負する。

準決勝の東北戦で9回裏逆転3ラン。勝負強さと、パンチ力は誰もが認める。杉山賢人さん(元西武)を父に持つサラブレッドであり、チーム一の努力家だ。
「バッテリーを含めて(選手の起用に)いろいろな形があるなと分かった大会でもあった。夏に向けて僕自身も最善な組み合わせを考えていきたい」。優勝インタビューのあとに佐々木監督が、夏への構想を口にした。
頻繁に選手交代を行い“トライアル”なことができた東北大会。その中で、フルで使い続けたのが山田、佐川、杉山のクリーンアップトリオだった。
東北大会での3選手は、佐々木監督を満足させる打撃がけっしてできたわけではなかった。3選手で無安打の試合(聖光学院戦)もあったが、それでも指揮官は我慢して使い続けた。
快音が出たのは準決勝・東北戦。3-5で迎えた9回裏。途中出場の二番若山の安打のあと、山田の二塁打で好機を広げ、1死二、三塁で四番佐川。深く守っていた相手セカンドへのゴロが内野安打となり、1点を追加。1死一、三塁で五番杉山が渾身の逆転3ランを放ち、緊迫した試合に終止符を打った。
佐々木監督も思わず「途中でコールド負けも覚悟しました。久しぶりに感動したね……」と興奮した逆転劇。山田の冷静なコース打ち、佐川の全力疾走、杉山の土壇場での底力……。苦しい試合で力を発揮する「役者」の3人が、真骨頂を見せた戦いだった。一発勝負のナツタイの活躍に期待したい。
(取材・文=樫本ゆき写真=松橋隆樹)
【仙台育英】関連記事
School Data 仙台育英学園高校
●監督/佐々木順一朗
●部長/郷古武
●部員数/3年生38人、2年生50人、1年生31人
創立1905年。東北を代表する強豪校。野球部の主なOB は、由規投手(ヤクルト)、上林誠知選手(ソフトバンク)など。2015年夏は甲子園準優勝を経験。2017年春にも甲子園出場を果たしている。