選手

独特なキャプテンシーでチームを引っ張る仙台育英西巻賢二選手の今

2016.10.14

秋季大会は5年連続20回目の優勝。狙うはセンバツ出場権の獲得

しっかりと自分の考えを「言葉」にすることができる西巻キャプテン。メジャーリーガー・イチロー選手の動画などを見て、自分なりに参考にしているそうだ

秋の宮城県大会決勝。仙台育英が6-0で東陵を破り、5連覇を達成した。その時、仙台育英の選手たちは皆、落ち着いた表情で思い思いの喜びを噛みしめていた。特に冷静に見えたのがキャプテンの西巻賢二(2年)だった。
「まずは宮城県の第一代表になりましたが、課題を修正して東北大会に臨みたいと思います」
淡々とインタビューに応えていた。昨秋の東北大会準々決勝では青森山田に敗れ、センバツ出場を惜しくも逃している。今夏も東北に準決勝で惜敗。あくまでも通過点――。甲子園に賭ける並々ならぬ思いが言葉から伝わってきた。

この数日後、多賀城市にある仙台育英のグラウンドで彼に話を聞いた。学校行事の関係で、早めに開始された練習は午後3時に終了。周囲の選手から「ケンジ、取材かー。いいな〜!」と冷やかされながらベンチに座ると「自分はいつもイジられ役なんです」と、大会中には見せない満面の笑顔で嬉しそうに話してくれた。

中学時代は日本一も経験し、高校入学後に1年夏からベンチ入り
西巻選手が考える、キャプテン像とは

 「キャプテン、とは。チームの代表となる選手のことだと思います」。シンプルな言葉で語った。1年夏からメンバー入りし、2015年夏の甲子園決勝では代打で出場。1年生ながら、東海大相模のエース・小笠原慎之介投手(現中日)のチェンジアップをレフト前へ安打した度胸とセンスは記憶に新しい。そんな彼も、いよいよ最高学年となった。新チームのキャプテンを決める時は、満場一致で西巻の名が上がったと言う。「中学時代(仙台育英系列の秀光中教校)もキャプテンでしたし、高校でもなりたいと思っていました」。中3夏に全国大会優勝を達成しているその顔には自信が満ち溢れていた。

秋の県大会をふりかえると「いざ新チームが始まると苦しい戦いが続いて、県大会初戦の名取北戦は1対0(5安打)の辛勝でした。この試合の後、心のどこかに『行けるだろう』という慢心があったことを選手ミーティングで反省しました」。佐々木順一朗監督からは「助け合う気持ちが足りない」と指摘されたと言う。「その言葉の意味を考えて、全員で一丸になろうと話し合いました」。その結果、次戦の3回戦では打線が14安打と奮起。東北学院に10対0の5回コールド勝ちを収めてチームの調子は上向いた。

福島・会津若松の実家を離れ、中学時代から寮生活。「自立することを覚えました」

「あえて理不尽に怒っています」と成長を期待する佐々木監督
見据えるのはセンバツ出場、そして夏の全国制覇

 西巻は右投げ右打ちの攻守の要として1番ショートを任されている。投手も兼任し、決勝では4番手として完封リレーを締めくくった。身長は166㎝と小柄だが、キレのある速球が武器。週3回はブルペンで投球練習を行い、投手としての意欲も旺盛である。驚かされるのが、「キャプテン、1番ショート・投手」。一人三役をこなしていることに、悩みや苦労はないと言う。中学時代の恩師、秀光中教校野球部の須江航監督は「野球も勉強もできる。非の打ちどころがない選手でした」と振り返る。佐々木監督は、そんな西巻の特性を熟知した上で「あえて『まだまだだね。大したことないね』と言って、理不尽に怒っています」と笑顔で話す。その西巻は「先生からの言葉に、そうか!という発見がある。『解(わか)る』ことが楽しいんです」と前向きにとらえている。西巻のこの求心力がチームの強さだということは間違いない。

 10月14日から山形県で開催される東北大会に臨む。西巻の故郷である福島・小名浜少年野球教室時代の知り合いや、中学時代の仲間が他校に多くいるので、再会を楽しみにしているそうだ。しかし、すぐに表情を引き締め「1戦必勝で戦い、東北大会を優勝します」。強烈なキャプテンシーで、チームを優勝へと導く。(樫本ゆき)

新調したグラブには、好きな「7」の数字を入れている。このグラブで東北大会に臨む

秋の大会では、ずば抜けた打線の破壊力はなかったが、複数投手陣を中心とした守り勝つ野球で地区大会で東北を、県大会決勝で東陵を破り、5年連続20回目の優勝を収めた

膝のケガが治り、県大会から復帰した左腕・長谷川拓帆が140km台の速球で4試合24回28奪三振を記録。エース格として大活躍した



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