◆目 次◆
テンポのよいバッティング練習
各ポジションの守備練習が終わると次はバッティング練習。
ドミニカのバッティング練習は10〜12mほどの距離からのボールを打つ、という練習スタイル。バッティングピッチャーは必ず監督またはコーチが投げる。投げる、打つ、投げる、打つ。テンポよく進む。途中で指導を挟んだりして練習を止めることは滅多にない。
一見シンプルに見えるのだが、実はたくさんのエッセンスが隠されている。
至近距離からテンポよく投げ込むスタイルのドミニカのバッティング練習。この“テンポのよい”バッティングピッチングにも利点とは?https://t.co/uYDM2Ld3hv#高校野球 pic.twitter.com/lmNlPP1gZW
— タイムリーWEB (@timelyweb) 2017年4月25日
逆方向に打つ意味〜インサイドアウト〜
まず、バッターは逆方向を狙って打つ。コーチも何か指導するとしても「逆方向に打つんだ。」としか言わない。これはインサイドアウトの軌道を身体に覚え込ませるためだ。
先ほどの「アウトサイドイン」気味のスイングの若者。するとすかさずコーチから「インサイドアウト」の指導が入ります。https://t.co/M7e4QC8qQJ#高校野球 pic.twitter.com/dfEtmcQ7K8
— タイムリーWEB (@timelyweb) 2017年4月25日
ドミニカでは金属バットは使用せず、すべて木製バットである。アウトサイドインで振ろうものならすぐに折れてしまう。またアウトサイドインのスイングだとボールが飛ばない。ドミニカの子どもたちは幼い頃から木製バットでバッティングしているからこそ、インサイドアウト軌道で打たなければ飛ばないということが身に染みて理解しているようだ。
日本はこの点では金属バットの弊害を受けていると言える。高校通算何十本も打っている打者が大学やプロで音沙汰なしということが時々あるが、やはりこのことが繋がっているのでないだろうか。
この日のプログラムの子どもたちも逆方向に的確に打ち返していた。
このコーチが投げるバッティングピッチャーのボールだが、簡単そうに見えて、実は近距離からそこそこの球速で投げるため体感スピードは速い。しかし、そのボールに対してとにかくミスショットが少ない。的確にライナーが逆方向に飛んでいく。これもインサイドアウトの恩恵といえる。こねたり、引っ掛けたりしない分、ライナー性が増える。(日本に帰って自分のチームでこのスタイルのバッティング練習をやっているが、なかなかうまく打てない。やはりドミニカのプログラムの子どもたちは打撃の質が高かったのだと実感している)
また逆方向を狙っているからこそ、いわゆる『開きが早い』選手が少ないようにも見えた。
バッティング練習に含まれるたくさんのエッセンス
このプログラムの時期は変化球の対応などは一切練習しない。とにかくストレートを的確にアジャストしていくことに集中する。よってこのテンポの良いバッティングピッチングは『リリースからインパクトのリズム』を身体に覚え込ませるという効果もあるそうだ。変化球だとかボール球だとかを考えさせず、とにかく打ちやすいボールをリズム良く供給して、打者たちに基本となる逆方向のバッティングを覚え込ませていく。
この“リリースを見せる”ということにもこだわっている。リリースポイントをしっかり感覚として見ることも躾けているようであった。
さらに、名コーチほどこのバッティングピッチャーが上手いそうだ。
横浜DeNAベイスターズ、侍ジャパンの4番・筒香嘉智選手もドミニカウィンターリーグに参戦しているときに、あるバッティングピッチャーの打ちやすさに感動し、またこのバッティングピッチャーのおかげでバッティングが巧くなったという逸話を聞いたことがある。
打者に成功体験を積ませたい時期には打者の打ちやすいボールを投げる。それだけではなく、「そのスイングではここは打てないよ」と伝えるためにわざとその打者のスイングでは打てないところに投げたりもするそうで、その打者の特徴を掴む眼力とそこに投げるコントロールを必要とする。
バッティングピッチャーを生徒に任せ、またそこまでの目的意識なく取り組んでいた自分を恥じ、また名コーチには名コーチたる所以があるのだと感心した。
この日1人のバッティングピッチャーが約1時間強の時間を投げ続けていた。コントロールや球威が落ちることはない。これを毎日続けるそうだ。見た目はおじさん、おじいさんでも体力も気力も充実していた。
野球以外の学びは「¡Hola!」
野球以外の学びは「¡Hola!(オラ)」です。
街の人も、選手もコーチも、とにかくドミニカ人はみんな明るく本当にいい人です。
「¡Hola!(オラ!)」=「よぉ!」という意味なのですが、初対面でも「¡Hola!」と言いながら笑顔で握手やグータッチをします。どんなに関係なさそうな人とでもすぐに笑顔で「¡Hola!」とグータッチですぐに繋がります。シャイな私でも気軽に話しかけることができ、本当に気持ちがよく、人があたたかいと感じました。
国民性と言ってはそれまでですが、純朴で、純粋な気持ちになりました。私も含め、日本はやはりどこかよそよそしく、なかなか心を開放できないと思います。
本当にドミニカ人のあたたかさ、気持ちがよかったです。
平野太一
1985.5.23(31歳)
大分県立別府鶴見丘高等学校 → 川崎医療福祉大学(中国地区大学野球連盟1部リーグ)
大学3年秋季1部リーグ戦にて首位打者(.471)、ベストナイン(三塁手)を獲得。
【監督歴】
神奈川県立津久井浜高等学校 → 神奈川県立瀬谷高等学校