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【流れを変えたあのプレー】作新学院(栃木) × 木更津総合(千葉)

2017.2.20

グラブを弾く鋭いライナー、強烈なスピンが効いた変則的なゴロが目立った昨年の甲子園。しかし、捕球することが難しい打球を確実に仕留めたからこそ、勝利を掴みとったチームがある。試合の流れを変えたプレーを振り返り、守備の重要性に今一度目を向けてみよう。

【戦評】

大会を代表する好投手同士の投げ合いが期待されたが、作新学院打線が序盤からホームラン攻勢を見せて3点をリードする展開に。作新のエース今井は中盤以降ピンチが増えたものの、木更津総合の反撃を1点に抑え、見事にリードを守り切った。

反撃の芽を摘んだ息の合った中継プレー

初戦で自己最速を更新する151kmをマークするなど、この大会で最も評価を上げたのが作新学院のエース今井だろう。今治西(愛媛)を相手に衝撃の13奪三振デビュー。続く花咲徳栄戦(埼玉)でも10奪三振の活躍。一方、木更津総合のエース早川も2試合連続完封。打たれたヒットは2試合でわずかに5本と抜群の安定感が光る。大会屈指の好投手の対決ということもあり、第4試合ながら35,000人の大観衆が甲子園を埋めた。

大方の予想に反し、初回からいきなり試合は動く。1回表、作新の三番入江が早川の139kmのストレートを完璧にとらえて左中間へ先制ホームラン。3回には2死から一番山本が四球で出塁すると、続く二番山ノ井が2球目の甘く入ったスライダーをとらえ、ライトスタンドへ。ホームラン攻勢で作新が3点をリードする展開となる。

今井は立ち上がりから抜群のピッチングを披露する。連投ということもあり、スピードは抑え気味ながらも丁寧な投球で、3回まで木更津総合打線をノーヒットに抑え込む。早々に失点をした早川もその後は立ち直り作新打線に連打、長打を許さず中盤はスムーズに試合が進む。

木更津総合が反撃を見せたのは7回。先頭の六番井上が四球を選び、その後2死二塁とすると九番のキャッチャー大沢が初球のストレートをライト前に弾き返して1点を返す。続く一番峯村も四球を選んで一・二塁とチャンスは続く。しかしワンストライクの後、二塁ランナーのリードが大きいと見るとすかさずショートの山本がベースに入り牽制タッチアウト。牽制球をしっかりとグラブでホールドし、スライディングの勢いに負けずボールをこぼさなかった。

しかし木更津総合も諦めない。続く8回は1死から三番小池がレフト前にヒットを放ち、ここで迎えるは四番の鳥海。初球の甘く入ったカットボールを引っ張ると打球はレフト線を襲う。一塁ランナー小池は俊足を飛ばして一気に三塁を回りホームへ。しかし作新は前の回の途中からレフトの守備に入っていた鈴木がライン際の打球を素早く処理し、中継に入ったショート山本に返球。それを受けた山本もすかさずホームへストライク返球を見せ、ランナー小池を間一髪でアウトにした。ノーバウンドのビッグプレーに、この日一番の歓声が上がった。

甲子園は左中間、右中間が広く、ライン際が狭い独特の形状をしていることもあり、クッションボールの処理でもたつくことが非常に多い。そういったことを熟知しているからこそ守備力の高い鈴木を回の途中から守備固めとして起用した。打球の強いクッションボールは不規則な回転と合わさり、非常に難しい。しかし、うまく捕球し、握りかえをスムーズに行うことは外野手の隠れた見せ場でもある。また、7回の牽制に続き、ショート山本の中継に入る素早い動きと、ホームへの正確な送球も見逃せない。

9回裏は今井が三人で締めてゲームセット。試合時間1時間41分と非常に締まったゲームとなった。試合を決めたのは作新の2本のホームランと、エース今井の好投が主要因であるが、7回、8回に見せた作新の好守備がなければ木更津総合が追いつくチャンスは十分にあったはずだ。6年連続夏の甲子園に出場し、球場でのプレーを熟知していた作新ナイン。彼らがその後、初優勝を成し遂げるのも納得のプレーだった。(文:西尾典文)



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