企画

【少年野球指導者のひとり言】球速の呪縛

2016.5.13
投手にとって「球速」は大きな魅力のひとつです。球威ある投手は注目を浴びますし、新聞で高校生の投手を紹介する時には、必ずと言っていい程「MAX○○○km/h」などと表記されます。小学生で体格に恵まれた子は、その体格を活かして速い球を投げようとしますし、その速い球を称賛する周囲の声もあります。

敢えて苦言を呈しますが、いくら体格が良いといっても、所詮は小学生です。筋力も弱く、関節の骨も固まっていない状態で100km/hを超える球を連投すると、肩肘への負担は大きいです。私も長い競技生活の中で、そうやって称賛されていた選手が肩肘を痛めて競技を断念する姿を幾度となく見てきました。

球速にこだわり過ぎることは、投球動作のバランスを崩した無理な体勢で投げようとしたり、制球力改善の妨げになるケースもあります。

批判を恐れず、敢えて申し上げます。
小学生に対する「球速への称賛」をやめませんか?

統計的に見ても中学生までの球速は身長や体重に比例するという結果が出ています。「体格」は本人の努力ではどうしようもない部分が多々あります。もっと本人の努力が反映される要素で称賛すべきではないかと思います。

小学生は「試合経験を積むこと」が大切です。そのためにも身体への負担が少なく長いイニングを投げられるよう、制球力重視の指導をすべきではないかと思います。私が現役時代に肩肘の故障がなかったのは、高校まではあまり球の速い投手ではなかったからではないかと思います。

※Facebookページ「少年野球指導者のひとり言」より転載。


著者:廣川 寿(ひろかわ ひさし)
愛媛県出身。松山北高校時代に投手として選抜高校野球(春の甲子園)に出場。甲南大学時代は投手として阪神大学野球連盟の数々の記録を塗り替える。社会人野球まで投手として活躍。自身の息子が少年野球チームに入部したことをきっかけに学童野球のコーチとなる。現在は上場企業の管理職として働く傍ら、横浜港北ボーイズのコーチとして「神奈川NO.1投手の育成」を目標に掲げ、中学生の指導に情熱を注ぐ。


  


PICK UP!

新着情報