◆両エース一歩も譲らない投手戦
南陽工のエース重富将希は大会前から各メディアに取り上げられてきた注目の選手。最速140キロのストレートと、落差のあるチェンジアップを武器に、チームを昨秋中国大会準優勝に導いた本格派右腕だ。対する市和歌山のエース赤羽陸は、荒削りながらストレートのスピードが特出したタイプの先発型投手である。両投手の気迫のこもったピッチングが試合を引き締めたことは言うまでもないだろう。
試合は序盤から南陽工打線がチャンスを作るも、ギアの入ったピッチングで赤羽がホームを踏ませない。この日最速143キロを計測したストレートは制球にバラつきがあったものの、打者をねじ伏せることができる力のあるものだった。対する市和歌山の前に立ちはだかった重富は安定感のあるピッチングで的を絞らせない。5回裏に自らの暴投と、味方の失策で招いたピンチも、最後は内野ゴロに抑えて得点を許さない。
中盤以降は両チームともに度重なるエラーでビッグチャンスを手にするが、焦る気持ちが走塁ミスに繋がってしまい、なかなかホームが遠い。味方のミスをカバーするエースのピッチングにはお互いの強いプライドが垣間見えた。
◆9回表にドラマは待ち受ける
8回裏のワンアウト二塁のピンチも乗り切ると、重富の力投が9回表についに実ることとなる。
制球が定まらない赤羽が先頭打者を死球で歩かせる。次のバッターも死球により二者連続デットボールでノーアウト二塁の大ピンチ。迎えたバッターは同じく9回まで投げ続けている重富。チャンスを広げるためバントを試みたが、これが微妙なバントになってしまった。赤羽は三塁封殺を狙うが、なんとこの送球が逸れてしまう。その結果、ランナーが生還となる痛恨のフィルダースチョイスとなった。
1点を献上するも、なんとか二死まで持ちこたえたが、二番笹部航介に3ランホームランを打たれ、赤羽は途中降板。9回に爆発した打線の援護を受け、重富は9回裏のマウンドもゼロに抑え、6-0の完封勝利。南陽工が緊張感のある試合を制した。
◆炎のストッパー越えなるか!?
勝利した南陽工は広島東洋カープ伝説の炎のストッパー故津田恒実の母校として有名だ。津田はエースとして1978年(昭53)の春・夏に甲子園に出場。春は2勝を挙げベスト8。夏は2回戦で敗れたが1回戦の宇治山田商戦で完封勝利した。
魂のこもったピッチングをモットーに生涯を通じて多くの人の記憶に残るピッチングを魅せた偉大な先輩。頼もしい後輩である重冨が、偉大な先輩の記録を超えることができるか楽しみである。