トレーニング

【新しい投手指導の教科書】継投策のポイント

2022.9.30

筑波大学硬式野球部監督でもある川村卓准教授の著書「新しい投手指導の教科書 これからの野球に必要な『投手兼野手』の育成術」(カンゼン)から、現場での投手育成に役立つ部分を抜粋して紹介したいと思います。今回は第5章「実戦で力を発揮する方法」の中から、「継投策のポイント」を紹介します。


継投の順番を伝えておく

ここからは、継投の考え方や登板に向けての準備について触れていきたい。
先発としてマウンドに上がるのであれば、アップからブルペンでの投げ込みまで、自分のペースで準備を進められるが、野手兼投手の場合は、自分のポジションから直接マウンドに上がる機会が多い。

肩の準備は、試合中のボール回しなどで動かしているので、そう心配はないだろう。問題は、心の準備のほうだ。いきなり投手交代を告げられると、どんな選手であっても緊張感が走る。ドキドキしたままマウンドに上がった結果、「持っている力をほとんど発揮できなかった……」となるのは非常にもったいないことだ。

指導者側が心がけておきたいのは「試合前に継投の順番を伝えておく」ということだ。私自身もあらかじめ伝えておくようにしている︒先発︑二番手︑三番手︑四番手︒もちろん︑試合は常に動いているので想定通りにいかないことも多いが︑順番だけは極力変えないように気をつけている︒理想を言えば︑﹁走者が出てクリーンアップに回ったときにはいくからな」と状況まで伝えられると、さらに準備がしやすくなる。こうしたことを、公式戦だけでなく練習試合のときから試しておく。

筑波大では、先発が何かアクシデントに遭ったときのために、初回から準備を始める投手も用意している。ピッチャーライナーを受けたり、熱中症でプレーが難しくなったり、不測の事態が起こりうるからだ。

先発が序盤をうまくまとめてくれれば、緊急登板用の二番手の役割は終了となり、次の継投候補は三番手に移る。もし、この選手がショートを守っているのなら、「次はおれの番だな」と、守りながらも心の準備ができる。

たまに、継投の順番を伝えておきながらも、試合中の閃きで入れ替えるときもある。そのときの成功率はおおよそ五分五分。うまくいったこともあれば、結果に結びつかなかったこともある。選手たちが「え?ここで継投?」と驚いてしまうような継投はなるべく避けたほうがいいだろう。

*続きは書籍でお楽しみください。

内容紹介

科学的アプローチから導く最前線の野球コーチング本
「野手兼投手」の育て方にクローズアップ

二刀流は当たり前?
ケガ予防&投球数制限対策に
エース1枚から継投で勝ち抜くチーム作りを

スペシャルインタビュー
工藤公康(元福岡ソフトバンクホークス監督)

<目次>
第1章 投手と野手の違い
第2章 一流投手のメカニズム
第3章 タイプ別の指導法
第4章 下半身と上半身をつなげるトレーニング
第5章 実戦で力を発揮する方法

書籍情報

川村 卓
カンゼン
1800円(税別)




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