春夏合わせて5度、甲子園を制した実績を持つ東海大相模。2021年夏の神奈川大会を最後に、1999年から監督を務めていた門馬敬治氏が退任し、9月1日から原俊介氏が新監督に就任した。指導者が代われば、野球のスタイルが変わるのは当然だが、原監督はどんなチーム作りを目指していくのか。「強豪校の新監督」シリーズ、今回は監督として母校の東海大相模に戻ってきた新指揮官を訪ねた、取材後編をお届けする。
ビッグイニングに泣いた春
今春の県大会では準々決勝で桐蔭学園に5対9で敗戦。4回にエラー、連打、連続四球が絡み、一挙6点を失った。東海大相模にとっては、近年ではほとんど経験したことがない失点の仕方だった。「なぜ、ビッグイニングを作られてしまったのか。春の大会が終わってから、よく話をするようにしています」
原俊介監督の目に、あのイニングの守備はどう映っていたのか。
「ピッチャーと野手の連携がうまくいってなかったり、投球の間合いだったり、相手の攻撃に対する予防策だったり、いろいろな要素が絡んでいます。どうしても、グラウンドの中でエアポケットに入る選手が出てくると、ああいう展開になっていきやすい。そこは練習や練習試合のときから、より気を付けて取り組むようになりました」
原監督が内野のリーダーとして期待しているのが、ショートの深谷謙志郎とサードの笹田海風だ。ともに闘志あふれるプレースタイルで、『アグレッシブ・ベースボール』を象徴するような選手だ。
「深谷も笹田も、チームを引っ張ってくれるファイターです。ピッチャーに声をかけるタイミングもわかってきているので、夏の試合でもアクションを起こしてほしい」
ピッチャーは、求航太郎、庄田聡史、庄司裕太の3年生右腕を中心とした継投が予想される。
「自分が投げたいボールを投げるだけではなく、バッターを抑えるための“ピッチング”がどこまでできるか。しっかりと打たせて取れるようになれば、守備陣の一体感が生まれてきます。そうすれば、内野にも外野にも良いプレーが出やすく、“質の高い”守備を展開しやすい。相模の高い攻撃力を発揮するためにも、しっかりと守ること。守備はもっと鍛えられると感じています」
夏を勝ち抜くには、守りがカギとなる。
体に対する意識を高める
今春の桐蔭学園戦、ショートの深谷が4回途中に足を攣り、試合中で交代するアクシデントがあった。
「深谷には、『筋持久力が弱いからではないか?』という話をしました。高い出力を発揮することばかり繰り返していると、筋肉への負担は強くなります。『毎日、ランニングをするだけでも変わるぞ』と伝えたところ、毎朝、グラウンドで自主的に走るようになりました。暑くなる夏は余計に足を攣りやすくなるので、できるかぎりの準備が必要になります」
野球の能力は間違いなく高い東海大相模の選手たちだが、「まだ高校生。身体的な面では、これからの部分がたくさんある」と見ている。
「ケガにはさまざまな種類がありますが、ウォーミングアップとクールダウンを丁寧に行うことで防げるケガもあります。自分が持っているパフォーマンスを発揮するためにも、欠かせないことです。就任してから少しずつ言い始めて、寮でストレッチをする選手も増えています。自分自身で、どれだけコンディションを整えられるか。食事、睡眠、体のケアでしかリカバリーはできないわけですから、そのあたりの意識はもっと高められると感じています」
冬のトレーニング期には、体の連動性にフォーカスをあてたメニューをいくつか取り入れ、“動き作り”に時間をかけた。
「機能的に動ける体を作っていなければ、トレーニングの効果は上がりませんし、ハードな練習がケガにつながることもあります。たとえば、ボールを投げるときに胸椎の柔軟性がないと、肩やヒジへの負担が大きくなる。体の動きに制限がかかると、代償動作で補おうとするためケガのリスクが増えていきます」
こうした話を少しずつしながら、体に対する意識を高めている。