野球の指導現場で生かされる「検定型授業」
そんな馬場校長と野田監督が中心となって取り組んでいるのが「検定型授業」と呼ばれるものだ。体育の授業で行う全ての種目においてに動作を細かく段階に切り分け、それぞれの検定をクリアしていくことでスキルアップしていくというものだ。このような取り組みに至った経緯を馬場校長と野田監督はこう話す。「以前と比べて運動経験の少ない生徒が多いですね。バドミントンなんかでも、下からのサーブでもなかなかラケットにシャトルが当たらない生徒もいる。女子だけじゃなく、男子でも投げる動きが苦手な生徒も多いです。そんな状況で今まで通りの授業をしていても上手くいきませんよね」(馬場校長)
「まずは校長の言うような体育の苦手な生徒にどう楽しさや達成感を感じてもらえるかというアプローチからスタートしました。バドミントンでも、シャトルに当たらなくてもちゃんとラケットが頭の後ろから振れたら1点、シャトルがネットを超えなくても頭の前でとらえられたら1点、みたいな感じで細かく分けて、それをクリアできると喜ぶんですよね。それまで体育がダメだダメだって言われてきた子たちですから、特にそういうのはあると思います」(野田監督)
逆にスキルの高い生徒は教える側に回ることで気がつくこともあるという。今年度からは1人に1台支給されたタブレットを使い、フォームの撮影を行うことでより効果も上がっているそうだ。
そしてこのような取り組みは野球部の指導現場でも生かされているという。
「守備のドリルはよくあると思うんですけど、バッティングでも同じような考え方で取り入れています。さっきのバドミントンと同じように、打てなかったとしてもピッチャーのテイクバックに合わせてバットを引く動きができたら1点、ピッチャーのステップに合わせてタイミングよくステップできたら1点、みたいな形で打てた、打てなかったという結果じゃなくて、そのプロセスを細かくやるようにしています」(野田監督)
“バッティング”という大きなくくりで考えるのではなく、細かく分けて考えてチェックすることで選手も迷いがなくなることが多かったという。その効果は昨年夏の愛知大会でも発揮された。
「準決勝で対戦した享栄高校さんは肥田(優心・亜細亜大に進学予定)、竹山(日向・ヤクルト5位)という150キロを超えるピッチャーが2人いました。実際にうちは150キロのボールを打つ練習をしていたわけではないですが、さっき言ったようなポイントをしっかりやろうということで臨んだら、試合には負けましたけどある程度打つことができました(肥田、竹山含む3投手から11安打で4得点)。本当は150キロが練習できるマシンがあれば一番いいのかもしれませんけど(笑)」(野田監督)
後編に続きます。
(取材・文:西尾典文/写真:西尾典文・学校提供)
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