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【夏密着】千葉聾学校/抜群の結束力で夏、2つの頂点を目指す!

2021.6.28

2016年に関東聾学校野球大会(軟式)で優勝を果たしている千葉聾学校。幼稚部から高等部までを併設する創立90年の伝統校だ。中学から野球を始めた選手がほとんどで、中高6年間で心身を成長させることが野球部の目的。工夫と明るさに満ちたろう学校の高校野球を取材した。


ろう学校の野球はジェスチャーが大きい。手話を使いながら、口の動きや、表情、体の動きで相手に意思を伝えている。「グラウンドでは自分を思い切り出すこと」がルールになっている。「ですので、みんな喜怒哀楽をはっきり出します。『一生懸命』が伝わってきますよ。綺麗な野球はできないけれど、みんないい子ばかりです」と藤田正樹監督は目尻を下げて話した。ジェスチャーが伝わらず守備で衝突することがある。ボールがぶつかることもある。練習中はボールから目を離さず、集中してプレーしなければいけない。選手たちは社会に出ても起こりうるリスク管理や状況判断力、コミュニケーション力の訓練を、野球を通じて行っているのだ。


キャプテンになってから積極的にコミュニケーションをとるようになった大土主将(写真右)。

千葉聾学校、通称チバロウ。部員は中学生10人、高校生9人。中学・高校合同で練習をする仲のいいチームだ。スタート時は野球初心者がほとんど。藤田監督は「ゼロから始まる選手たちが一緒に野球というスポーツを知って、教え合って、共感して、できなかったことができるようになる。フライが初めて取れた、ヒットが初めて打てた、そのときの表情がすごくいいんです。チバロウの監督になってよかったなと思う瞬間ですね」。

バットも振れなかった選手が6年間で見違えるほど成長する。「成長度が凄い。少年野球を指導しているような感じですかね」と続けた。


ノックを受ける大内選手。取れなかったボールが取れるようになった時が、自分の成長を感じる時だ。

冬の100日2万スイングで自信。手にできたマメは努力の証

高校生は、ろう学校の大会と高野連主催の軟式大会の2大会に参加できる。春の公式戦では木更津総合と連合チームで1勝を挙げることができた。聾学校野球大会は立川ろう学校、中央ろう学校、千葉聾学校が「関東3強」と言われている。関東8校の高校でトーナメント戦で5年ぶりの優勝を狙う。唯一の3年生である大土優凪(おおど・ゆうなぎ)選手は「去年は大会が中止になったので、先輩のぶんまで笑顔で楽しく野球をして終わりたい。キャプテンとして野球と学校生活の両方をしっかりしなければいけない。いろいろ忙しいですが、キャプテンをやってよかった」。冬はチームで掲げた「100日一人2万スイング」を達成。手にできたマメは努力の証だ。形は違えど「最後の夏」を完全燃焼したい思いは同じである。


「ここの子は感情を出しすぎるくらいでいい」。全力で選手に向き合う藤田監督。

「チバロウは卒業して就職する生徒がほとんどですが、野球部の子は社会人になっても軟式野球を続ける選手が多いのが自慢です」と藤田監督。歩んできた野球が楽しかったから、または自分の成長を感じることができたから、選手は野球を続けるのだろう。チームスローガンは「応援されるチームになろう」。人から応援される人間は、人を助けられる人間になれる。それが藤田監督の思いだ。まだまだ知名度が低い、ろう学校の高校野球。甲子園を目指す高校球児と同じように、頂点を目指す夏はここにもある。


抜群の結束力で夏、2つの頂点を目指す!

(取材・文/樫本ゆき)


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