東海大相模の10年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた選抜高校野球。入場制限やブラスバンドの応援が禁止されるなど球場の雰囲気はいつもと違ったものの、2年ぶりの開催ということもあって連日大変な盛り上がりを見せた。そんな大会でのプレーぶりからベストナインを選出したいと思う。
投手:石田隼都(東海大相模3年)
ドラフト候補という意味では小園健太(市和歌山)、畔柳亨丞(中京大中京)、達孝太(天理)の3人が高評価だったが、大会での活躍では文句なしに石田となるだろう。5試合、29回1/3を投げて失点0、45奪三振、2四球とまさに圧巻の内容だった。テンポの良さが抜群で、野手も守りやすいことは間違いない。1回戦は高く浮くボールが目立ったが、大会が進むにつれて変化球の精度を取り戻したことが大きかった。
捕手:松川虎生(市和歌山3年)
守備面では川上陸斗(福岡大大濠)が一番安定しているように見えたが、打撃の圧倒的なインパクトで松川を選んだ。ヘッドスピード、インパクトの強さ、打球の速さは間違いなく今大会でナンバーワン。下半身の強さと粘りがあり、パワーだけでなく簡単に崩されることなく芯でとらえる技術も高レベルだ。ホームランこそ出なかったものの、厳しいマークの中でも2試合連続でマルチヒットをマーク。守備では少しスローイングが不安定だったが、フットワークの良さが光った。
内野手
一塁:秋本璃空(常総学院3年)
二塁:黒木日向(明豊3年)
三塁:山下陽輔(智弁学園3年)
遊撃:深谷謙志郎(東海大相模2年)
ファーストはあまり目立つ選手がおらず、背番号1で試合途中から守備についた秋本を選んだ。本職は投手だが、5番を任されていることからも分かるように打撃も非凡。パワーだけでなく柔らかさがあり、センターを中心に素直に打ち返すことができる。2試合で5安打の大活躍だった。
セカンドは準優勝の明豊で中軸を務めた黒木。172㎝と上背はないもののがっちりとした体格を生かしたフルスイングは迫力十分。東播磨戦、智弁学園戦ではいずれも3安打3打点の活躍を見せた。セカンドの守備も軽快で堅実さがあり、堅守のチームを象徴する存在だった。
サードの山下は強打の智弁学園で4番を任せられた右の強打者。腕力だけでなく、下半身をしっかり使って振れるのが大きな長所。3試合連続でタイムリーを放ち、主砲としての役割を果たした。チーム内では3番の前川右京に注目が集まっていたが、今大会の出来では山下が上だったと言えるだろう。
ショートは主将で高校球界を代表する守備名人である大塚瑠晏の急性胃腸炎による穴を見事に埋めた深谷を選出。背番号16の2年生とは思えない軽快なフットワークと、安定したスローイングで何度も守備でチームを救った。打撃はまだまだ課題だが、決勝戦ではサヨナラの足掛かりとなるセーフティバントを決めるなど、攻撃面でも自分のできるプレーで大きく貢献した。
外野手
左翼:門馬功(東海大相模3年)
中堅:松尾光気(福岡大大濠3年)
右翼:八巻真也(仙台育英3年)
レフトの門馬は東海大相模のトップバッター。昨年のチームと比べると打力が劣る中で、チームトップとなる9安打を放ち優勝に大きく貢献した。思い切りの良いフルスイングで、甘いボールを逃さず打つスタイルがチームに勢いを与えたことは間違いない。走塁の意識も高く、打線の中心的存在だった。
センターの松尾は8番打者ながらパワフルな打撃が持ち味。2回戦の具志川商戦では試合を決めるホームランを含む3安打2打点の大活躍で、チームを準々決勝進出に導いた。確実性には課題が残るものの、インパクトの強いスイングで、相手投手に与えるプレッシャーはかなりのものがあり、センターの守備でも運動能力の高さが目立った。
ライトの八巻は1回戦こそノーヒットに終わったものの、2回戦の神戸国際大付戦では4安打、準々決勝の天理戦ではエースの達からホームランを放つなど、3番打者としてチームを牽引した。上背はないものの、パンチ力は申し分なく、思い切り引っ張る打球は迫力十分。昨年秋は背番号5で、今大会でも途中からサードに入り見事なプレーを見せていたが、内野も外野も守れる器用さも魅力だ。
ドラフト候補という基準ではなく、あくまで今大会の活躍度合いで選出したが、全体的にはやはり投手の方が目立つ選手が多かった。ホームランがなかなか出なかったことも、好投手が多かったことが原因の一つと言えそうだ。夏には打撃で魅了してくれる選手がより多く登場してくれることを期待したい。
文/西尾典文