例えば1死3塁で「3塁走者を生還させる」が目的だとしたら、手段は「犠牲フライ」「スクイズ」「ホームスチール」など、多数の手段があり、相手投手や自軍の打者の状態を鑑みて、最も成功する確率の高い手段を選択するのが「作戦」です。
目的が不明確であれば、手段遂行の徹底度も下がります。
これは仕事の場面でも同じだと思います。
例えば無死3塁でセカンドゴロが飛んだとしても、セカンドは状況によって「本塁に投げないといけない場面」「一塁に投げれば良い場面」があります。違いは「1点もやれない場面か、それとも1点失っても確実にアウトをひとつ取りたい場面か?」によります。
それを「前を守れ!」「取ったら一塁に投げろ!」と手段だけを指導しても子どもの状況判断能力は磨かれません。「手段」にばかり気を取られる選手になってしまいます。
例えばアウトカウントを設定し、ランナーをつけて練習する場合もあると思いますが、「点差」も想定に加えた上で、「この場面で一番大切なことは何か?(=達成すべき目的)」をプレーを止めて説明しながら練習する、という場面も必要だと思います。
「今何が一番大切か?」を常に思考できる子を育成するために。これは野球に限らず、子どもたちが将来、自立して生きていくために必要なことだと思います。
※Facebookページ「少年野球指導者のひとり言」より転載。
著者:廣川 寿(ひろかわ ひさし)
愛媛県出身。松山北高校時代に投手として選抜高校野球(春の甲子園)に出場。甲南大学時代は投手として阪神大学野球連盟の数々の記録を塗り替える。社会人野球まで投手として活躍。自身の息子が少年野球チームに入部したことをきっかけに学童野球のコーチとなる。現在は上場企業の管理職として働く傍ら、横浜港北ボーイズのコーチとして「神奈川NO.1投手の育成」を目標に掲げ、中学生の指導に情熱を注ぐ。