企画

「最後まで選手たちと向き合う」。諦めない指導者たち

2020.5.20

日本高野連から甲子園中止の発表を受け、高校野球界に動揺が走った。「選手になんて言葉をかけていいのかわからない」、「この先どうしたらいいのか…」。多くの指導者が放心状態になる中、前を向く指導者もいる。甲子園大会開催への努力と、甲子園大会中止後の世界。その両輪をイメージし、準備してきた若き指導者たちだ。仙台育英・須江航監督は「ここからがスタート」と言った。その言葉には、覚悟と愛が込められている。


「リベンジ甲子園」でも何でもいい
自分の意思で形を残してほしい


甲子園大会は、中止が決まった。夢を追いかけて練習してきた選手たちが、涙を流す姿を見るのはつらい。かける言葉が見つからない。しかし、高校野球には必ず「終わり」が来る。甲子園があったとしても、選手たちにとっては、その先の人生の方が長い。気持ちが落ち着いたら、日本高野連・八田英二会長が言ったとおり今までの努力を自信と誇りにして、新たな夢への第一歩を踏み出してほしい。今はそれしか言えない。選手の気持ちは選手にしかわからないのだから。

福岡・県立城南・中野雄斗監督の言葉が忘れられない。
「うちの生徒は勉強ができる子が多い。それだけに『夏、野球ができなくなるのでは』と先を予測していた子もいたはずです。だからと言って手を抜くことだけは許さなかった。中途半端なことをしていれば、この先ずっと、中途半端な大人になってしまう。その癖だけはつけさせたくなかったんです」と熱く語っていた。きのう19日はオンラインを使い、メンタルトレーナーによるコーチングを受講した。心を整えて今日の会見を迎えたが、やはりショックは大きい。甲子園中止を受け「今日、生徒たちとじっくり話します。ここから先の彼らの選択も含めて」と話した。

立花学園・志賀正啓監督は正式発表を受け「甲子園出場経験がない本校にとっても甲子園はかけがえのないもの。聖地です。まだ信じられません」と肩を落とした。そして「ここまで尽力してくださった県高野連の方への感謝を忘れず、選手たちには最後まで全力で野球に向かわせます。将来『リベンジ甲子園』のような形で夢を果たしてほしい」と願った。

仙台育英の須江航監督はすぐに前を向いた。休部中、公式戦がすべて中止になったときのために、大学野球界に送る「選手PR動画」を作り続けていた。「(日本高野連管轄の)地方大会までなくなるとは…」と動揺したが、このままでは終わらない。「次の一手? もちろん考えてあります」。選手たちの未来を願う気持ちに「諦める」という文字はない。
「下を向いている暇はない」。中止決定を受けた仙台育英・須江航監督は3年生たちの高校野球に最後まで向き合うと誓い、次の策を練っている(写真は昨年12月撮影)

「君たちはどう生きるか」。文頭に書いた言葉を、自分の心でもう一度、考えて欲しい。甲子園という目標がなくなったいま、君は野球に背を向けるのか、それとも愛し続けるのか。(樫本ゆき)


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