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【明豊】「全力疾走は『美徳』ではない!」と川崎絢平監督が語る、その真意

2020.4.1

昨年春のセンバツでは横浜や龍谷大平安といった甲子園レジェンド校を撃破しての4強進出を果たした明豊(大分)。そんな明豊を率いる川崎絢平監督の著書「柔軟力」の中から、チーム強化の過程に起こった出来事、打ち出し続けた数々の策を引用し、その強さの秘密に迫ってみたい。


「大会前にメンバーに選ばれた選手に『お前はいったい誰のために頑張るのか』と聞くと、だいたいは『親やいつも応援してくれる人、支えてくれる人たちのために頑張ります』と言う。それは決して間違いではない。しかし、僕が一番に求めたいのは『試合に出られない仲間のために頑張りたい』という返答である。(中略)ホームランを打って思わず飛び出すガッツポーズは、ベンチに向かってではなく、応援席にいる仲間に向けてであってほしいと思う」
(第二章・明豊のチーム作り「あの手この手」で形作られた九州最強軍団~全力疾走は「美徳」ではない! 選手が全力プレーを怠ってはいけない理由~より)
 
スタンドには同じように苦しい練習をしてきたにも関わらず、応援に回った生徒がいる。ともに生活し、ともに苦しみを乗り越えてきた仲間たちがいる。グラウンドでプレーする生徒は、そんな仲間に対する思いを何より優先しなければならない。

それは“高校野球の象徴”として語られることの多い全力疾走についても言える。たしかに全力疾走は見栄えもいいし、見ている方も気持ちがいい。しかし、本当に重要なのは「見た目」であったり「高校野球は爽やかじゃなきゃいけない」といった外部からの視線ではない。スタンドには「全力疾走すれば試合に使ってもらえるのなら、俺は喜んで全力疾走する」と思いながらも、それができない部員がいるのだ。どんな平凡なゴロでも“なんとかセーフになりたい”と思いながら全力で一塁を駆け抜けることが、試合に出ている者が果たすべき100%の責任だと川崎監督は言うのである。
 
「『今日の練習ではお前たちに好きなことをやらせてやる。ただし、UNOはマウンドのプレート上でやってくれ』と言って、彼らには2時間ほどUNOをさせた。おそらくマウンド上でUNOをした高校球児は全国を探しても存在しないだろう」
(第二章・明豊のチーム作り「あの手この手」で形作られた九州最強軍団~全力疾走は「美徳」ではない! 選手が全力プレーを怠ってはいけない理由~より)

秋季大会の開幕を間近に控えたある日、寮のある部屋で消灯時間の23時を過ぎてカードゲームのUNOで遊ぶ生徒たちがいた。報告を受けた川崎監督は、彼らに対して「練習にUNOを持ってくるように」と伝えた。
新チームになって部屋替えをした後に、気分が高揚するのは理解できる。UNOをすること自体は別に問題でもない。しかし、チームの約束を破ることが、ゆくゆくはチーム力の低下に繋がっていく。こうした小さな積み重ねが、団体生活を送っているチーム全体に迷惑をかける結果になってしまうことだけは、生徒にも理解してもらわないと困る。

そこで川崎監督は、彼らに「マウンド上でUNOをするように」と指示した。彼らがマウンド上を占拠していることで、ノックもフリー打撃もできない。春の甲子園に繋がる秋の大会を目前に控えた大事な時期に、他の選手は練習がしたくてもできないのである。ルールを破ることが最終的には組織に悪影響を及ぼすことになるということを、川崎監督は“斬新な手法”で伝えようとしたのだ。


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