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【明豊】変化を続ける「柔軟力」を武器に、川崎絢平監督が目指す夏の頂点 

2020.4.2

昨年春のセンバツでは横浜や龍谷大平安といった甲子園レジェンド校を撃破しての4強進出を果たした明豊(大分)。そんな明豊を率いる川崎絢平監督の著書「柔軟力」の中から、チーム強化の過程に起こった出来事、打ち出し続けた数々の策を引用し、その強さの秘密に迫ってみたい。


3月に出版した明豊・川崎絢平監督の「柔軟力」。この本を参考に、明豊がいかにして九州屈指の強豪に成長していったのかを紐解く連載もこれが最終回。「新時代・令和のリーダー候補」の思考に、もう少しだけ接近してみよう。
 
「“開き”を矯正したい時にはどうしても前足に意識が集中するものだが、僕は軸足ですべては解消されると思っている」
(第四章・川崎流「技術論」練習に仕掛けた無数のマジック~キャッチボールのポイント(2)すべては軸足に集約される~より)
 
「ボールを投げる」、「バットを振る」。こうした野球の動きの中でもっとも重要とされるのが下半身の動きであり、これを指導することがもっとも難しいという指導者も多い。下半身を指導する上で頻繁に聞かれるのが「開くな」、「インステップを治せ」といったキーワードである。しかし、川崎監督は「開き」や「インステップ」はあくまで「結果」であって、結果についてあれこれ指導したところで解決にはならないと考えている。
 
すべての結果には、原因がある。なぜ開いてしまうのか。なぜインステップしてしまうのか。その前段階にある原因の部分から解消していかなければならない。とくに「開き」を矯正したい時には、指導する側もされる側も意識は踏み込む方の前足に集中する。しかし、川崎監督によると、踏み込んだ足が着地をする前に、軸足の膝から上が前方に向かって滑っていることが多いのだという。このように、問題個所の起点になっていることを探り、指導していかなければならない。
 
「ストイックに最高の打撃を追い求めていた西川は、常に練習で良い当たりを打たなきゃいけないとも思っていなかった」
(第五章・代表的な教え子たち「超・高校級」の才能に学んだこと~打撃の求道者・西川遥輝(北海道日本ハムファイターズ)~より)
 
 智辯和歌山でのコーチ時代から現在に至るまで、川崎監督は圧倒的な才能を持った多くの教え子たちと出会ってきた。この本では、指導に携わった代表的な選手たちの高校時代も振り返っている。
 
 パ・リーグ盗塁王3度、ゴールデングラブ3度受賞と、日本を代表する外野手として活躍している西川遥輝(北海道日本ハム)もそのひとり。高校時代の西川はマシン打撃を好まず、いつも打撃投手をしていた川崎監督(当時はコーチ)のゲージにやってきては「最初に真っすぐを5球だけください。あとは(球種)ミックスで僕を崩しにきてください」と言って、黙々と打ち込みを行っていたそうだ。
 
 その姿勢は常にストイックで、常に良い当たりを打たなきゃいけないとも思っていなかった。「インコースは、こういうバットの出し方を試してみよう」と思えば、たとえボテゴロになってもお構いなしに、同じ球種を同じスイングで打ち続けたという。高校時代から「自分に必要な練習」というものを理解した選手だったのだ。
 
「『日本一になるための練習メニューがある』という人がいるかもしれない。しかし、僕はそういうことではないと思っている。どれだけ長い時間“俺たちは日本一になるんだ”という思いで過ごしたかが重要ではないだろうか」
(第六章・「日本一」宣言“歩み始めたVロード”~わずか3、4カ月で頂点には立てない――センバツ4強でも「日本一」を口に出せなかった理由~)
 


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