企画

【準硬式】大学の準硬式野球部で野球と人間力UP!

2019.3.27

高校卒業後、「硬式ではちょっと実績が足りない」、あるいは「学業やアルバイトなど自分の時間も大事にしたい」と思う球児たちが、それでも本気で野球に取り組む場所、それが準硬式野球だ。大学準硬式の“王者”中央大学の練習グラウンドに先輩を訪ねた。


準硬式野球とは?

グラウンドの広さ、試合ルールなどは硬式野球とほぼ同じだが、ボールは硬式球と同じコルクで出来た芯に表面を軟式球のようなゴムで覆った準硬式球を使用する。各地の大学や社会人などにもリーグが存在し、リーグ戦やトーナメントが開催されている。とくに大学では競技者人口も多く、全国の多くの大学に部があり、大学選手権(インカレ)優勝の実績を持つ中央大学や日本大学などの強豪校には、高校時代に甲子園出場経験を持つ選手も在籍しプレーしている。過去にはドラフト指名を受けプロ野球に進んだ選手もいて、実力的にはハイレベル。限られた時間、練習環境のなかで練習に取り組む“自立した野球”が求められ、それが就職活動にも活かされている。

八戸学院光星の主将&捕手として甲子園春夏連続出場の経験がある千葉諒センパイ
全国屈指の強豪・八戸学院光星(青森)の主将&捕手として甲子園春夏連続出場を果たした千葉諒選手。高校卒業後は硬式の強豪大学でプレーする夢もあったが、故障のため試合への出場機会に恵まれなかったこともあり、少し目線を下げて出場機会が多そうなチームを探していた。そんなとき、高校の監督から「準硬式でやってみる気はあるか?」と中大進学を勧められた。正直、周りには「準硬式なんて」と反対する声も多かったという。

初めは「田舎者なので一度くらい東京で生活するのもいいかな」と軽い気持ちもあった千葉選手。だが何度か上京し体験入部を繰り返すうち、準硬式のレベルと中大の意識の高さを知る。池田監督とも何度も面談し、甘い話だけではなく、「練習は厳しいし勉強もしっかりやらなくてはならない」と説明を受け、「覚悟を決めて」入部したという。

それでも1年生の頃は、担当する仕事の多さなど、苦しさに耐える日々だった。高校時代の先輩との上下関係のような単純なものではなく、周りに気を遣ったり、言われる前に自発的に動いたりという“大人”の行動を求められる。「同じ思いを経験してきた先輩たちに支えてもらった」と振り返る。

池田監督が「日本一の練習」と胸を張る中大準硬式の練習風景。甲子園出場経験者も無名校出身も入学したら横一線。練習に取り組む姿勢の良い者が試合に起用され、結果を出した者がレギュラーを勝ち取る。

部員たちは毎朝、準備運動代わりに寮からキャンパス内にあるグラウンドまでランニングで向かう。

中大では4学年32人の部員が体育会の合同の寮に入り共同生活。授業のある平日の練習は早朝、寮からグラウンドまで約4kmのランニングからスタートする。公式戦で授業に出られないときには一般学生からノートを借りて補習することも。“文武両道”に妥協は許されない。また硬式野球などの体育会にありがちな部員たちだけで固まるのではなく、野球だけではない、学校内外で様々な立場の人との交流を推し進めている。

4年生になれば、いよいよ就職活動が待っている。そこでも中大の部員たちは、大学のキャリアセンター(就職課)副部長でもある池田浩二監督に、下級生の頃から希望する業界情報の収集、エントリーシートの書き方や面接のノウハウまで細かな指導を受けてきた。その成果もあって、地元の東北電力にUターン就職する千葉選手を始め、今年の4年生もそれぞれの業種のトップ企業への就職を決めている。そういう先輩たちの姿を見て、下級生もまた就職への意識が高くなっていく。

豊富なランニングと基礎トレーニングで体力の土台を作る。

短い練習時間のなかで集中力を高めバッティング、守備のスキルを上げていく。

そんななかで、インカレなどたくさんの大会で優勝を経験し、主将となった昨春には東都大学リーグでチーム通算62度目の優勝。充実した4年間を過ごした。華やかな硬式に比べると準硬式は確かに地味で知名度もない。それでも注目されるかどうかは選手たちの努力次第と、選手も監督・コーチも前向きに取り組んでいる。それが中大準硬式野球部だ。
「社会人になっても、少々のことではへこたれない心の強さは身に付いていると思います。苦しいこともたくさんあったけど、今は準硬式を選んでよかったと自信を持って言える。もし進路に迷っている高校生がいたら、薦めたいですね」 千葉選手は笑顔でそう言った。

監督・OBに聞きました!

池田 浩二監督

練習は甘くない、でもやりがいがある

「準硬式は(硬式よりも)楽だ」とイメージしている高校生が多いかもしれませんが、中大は大学準硬式のリーダーとして常に日本一を目指さなくてはならない立場。当然練習は厳しくなります。同時に人間形成を重視していますから、他大学と合同の海外遠征や、ボランティア活動など、4年間、グラウンド内外で感性を磨いて成長し、社会に送り出したいと私は考えています。

小泉 友哉コーチ(平成22年度卒業)

野球以外の経験もでき就活にも有利

大学4年生のとき、HPにあった職員の募集を見て応募。なんとか合格しました。当時は地元(沖縄)に帰って高校野球の指導者になる夢もありましたが、大学でいろんな経験をさせていただいたので、母校に恩返しの気持ちで職に就きました。今は商学部事務室に勤務しながら、コーチとして後輩たちを指導する毎日です。同期8人も様々な業種に就きバリバリ仕事をしています。


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