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投球障害予防のスペシャリストが語る、投球フォーム指導のアプローチ法は「選手の理想の考え方」をまず知ること

2019.1.11

神奈川県・東海大相模高校野球部出身であり、現在は関西医療大学で教鞭をとられている相澤慎太さん。ご自身の経験だけではなく、大学・大学院においてもスポーツ科学、身体のメカニズムについて学び、その指導を受けるためにプロ・アマ問わず多くの選手が相澤さんのもとを訪れます。「選手の動きを見ると選手の考え方がわかる」と語る相澤さんに投球障害予防につながる感覚の改善についてお話を聞いてきました。


選手たちがどういう考えを持っているかがスタート地点

−−投球フォームに悩む選手たちについて、相澤さんはどのようにアプローチされるのですか?

選手がピッチングしているところを見ていて思うのは、投球フォームにはその選手の考え方が表れているということです。だから例えば選手が投球フォームを改善したいと思って相談に訪れても、そのフォームを修正する前にまず選手たちの「考え方」を確認するようにしています。「速いボールを投げたい」と思っているのであればどこに力を入れて投げるといいと考えているのかとか、「決め球が甘い」と言われている選手だと力を入れるところを間違っているから体が開いてしまうとか、インステップしてしまう、といったところです。

あとは試合での勝ち負けであったり、指導者からのアドバイスによって選手自身が混乱しないように考えさせるようにしています。「腕を振れ」と言われたときに、見た目だけ腕を振るのではなく、どうしたら腕が振れる状態になるのかというところです。本当の意味を理解しないまま、形から入ってしまうとさらに混乱してしまうことになります。



−−なかなか思うように投げられないと練習が足りないのかと思って、投げ込みを増やすケースもあると思います

ボールが指から離れる瞬間のリリースポイントが安定しない選手というのは、たとえいいボールがいったとしても自信が持てません。同じボールをどうやって投げればいいのかがわかっていないからです。再現性のないピッチング、いわゆる出たとこ勝負、やってみなければわからない状態では選手自身も不安だと思いますよ。だから毎日練習で投げたくなってしまう、投球過多に陥ってしまうというところもあると思います。

一方、リリースポイントの感覚がつかめている選手というのは「こうやって投げたからボールがあの場所にいった」ということがわかっています。こうした選手の強みは、ピッチングを振り返って反省ができること。自分の考え方をピッチングで表現し、思うようにできなかった場合にはどこを修正するといいのか、姿勢は崩れていなかったか、筋力的な問題はないか、だんだん疲れてきてフォームにズレが生じていたのかといったことを確認し、それを改善していけばいいからです。だから疲労によるフォームの崩れが原因だとすれば思い切って休むこともできるわけです。

見た目ではなく内側の感覚にアプローチする

−−リリースポイントはどのように指導されていますか

リリースポイントについては「黒板に字を書くときの位置」をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。黒板に字を書くときは目でそのポイントを確認しますし、適切に力を出すことができます。ここをリリースポイントにすれば自然に出力されるポイントでもあるから、投球障害も少なくなるのではないかなと考えています。ただやみくもに投げ続けるのはコンディショニング的にも状態が悪くなる一方ですし、根拠のない練習になりがちです。野球漫画のイメージがわかりやすいですが、投げるときに体が開いて苦しい位置で大きな力を発揮して投げ込んでいますよね。あのフォームをマネしてしまうと「がんばっている感」「選手自身の充実感」はありますが、力はうまくボールに伝わらないし、そもそもケガにつながってしまうと思います。ただ、本当に力を出さなければいけないリリースポイントだと迫力に欠ける漫画になってしまうのは悩ましいところですが(笑)。



−−選手たちの内側にある感覚を指導することそのものが複雑で難しそうですね

もちろんそれは難しいのですが、それが投球フォームに現れているということです。この選手は指導者から言われたアドバイスをこういう風に解釈して、今のフォームになっているんだなという情報が体から発信されています。そうしたチェックポイントなども挙げながら、実際に指導しているエクササイズなども紹介していきたいと思っています。感覚を習得できるエクササイズを繰り返すうちに、形や見た目の改善ではなく、自然に思った形に近づけるようになれば、選手自身もその変化が面白いと思うでしょうし、やりたいと思ってやっている練習であれば大きなケガにはつながりません。指導者側からはフォームが確認できますが、選手自身は見られないので動画を撮って実際に見てもらうようなことも積極的に行っています。選手の考え方からアプローチすれば投球障害予防につながる投球フォームが無理なく取り組めると思います。(取材・文=西村典子、写真提供=相澤慎太)


次回のTimely! Performance Lab vol.2では相澤さんにも登壇いただき、投球障害を予防するピッチング指導をご紹介いただきます。是非、ご参加ください。

プログラム

第2回Timely! Performance Lab
『障害予防のスペシャリストから学ぶ、野球動作の基礎的な改善法』

【1】14:10-15:30 塚原 謙太郎氏「障害予防を意識した野球の動き作り」
【2】15:50-17:10 相澤 慎太氏「感覚の改善から入る投球フォームの提案」
【3】17:30-18:30 塚原氏、相澤氏パネルディスカッション、質疑応答(コーディネーター:西村典子氏)

開催概要

日時:2/3(日)14:00〜18:30 *受付開始 13:40〜
場所:ダイナミックスポーツ医学研究所(大阪・心斎橋)
参加費:一般10,000円 学生8,000円
募集人数:定員40名
■申し込み方法:https://t-p-l2.peatix.com/にアクセスし、チケットを事前購入してください。


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