トレーニング

強豪校野球部もサポートする塚原謙太郎氏が語る、トレーニングの継続と意義

2018.11.8

プロトレーナーとして、昨夏の甲子園優勝を果たした花咲徳栄高校や群馬の強豪健大高崎高校を始め、さまざまな高校野球部の指導をされている塚原謙太郎さん。「実はトレーニング指導の引き出しは多くないですよ」と謙遜する塚原さんですが、この言葉に秘められた本当の意味をおうかがいしました。


トレーニングはシーズンに関わらず常に継続することが大切

ーー走力をアップさせるためにはどういうトレーニングが必要でしょうか?
塚原 野球はオフシーズンになると体力づくりをメインとした練習に大きくシフトする傾向にありますが、トレーニングは本来、シーズンを通じて行っていかなければならないものです。グランドの片隅でちょっとした隙間時間を使ってできるもの、そしてあまりお金をかけずにその場にあるもので工夫しながらトレーニングを行えるようにするのが理想ですよね。こうした日々の小さな積み重ねが、野球におけるケガ予防やパフォーマンスの改善、向上につながっていきます。
走力アップのトレーニングでは、特に意識してもらいたいのが「体の使い方」です。自分の体をコントロールし、どこをどのように動かすとパフォーマンスに反映されるのかを頭で理解することが大切です。股関節の動き、肩甲骨の動き、立っている姿勢、体幹などパーツごとに考えるのではなく、それを一連の動作で理解し、野球のパフォーマンスにつなげていくようにアプローチしています。

軽自動車にダンプカーのボディをつけても速くならない

ーー学生からよく、「体重を増やすと速く走れないのでは?」という質問をよく受けます。
塚原 わかりやすく車にたとえてみましょう。自分のもっているパーツ(筋力などの体力要素)が軽自動車用なのに、ダンプカーのボディをつけても速くなるどころか、むしろエネルギーを浪費してしまい、燃費効率が悪くなり、速く走ることができません。一方でエンジンが大きくなればなるほどパフォーマンスが良くなることは容易に想像がつくと思います。トレーニングによってチューニング(調整)されたエンジンをどうプレーに活かしていくかということが「体の使い方」につながってくるのです。
一番大切なのは「何のためにトレーニングをしているのか」をしっかり自分で理解すること。スポーツカーを手に入れても運転技術を理解していなければ、そもそも乗りこなすことができません。これと同じで、ただやみくもに走りこみを行うだけでは走り込んだ後の変化を想像することができないので、やらされる練習になってしまい、結果速く走ることができないということになるでしょう。

ーーランニングでは本数を決めて行ったり、厳しいタイム設定を設けたりすることも多いですが、そのようなことはどうお考えでしょうか?
塚原 時には本数を決めたり、タイムを設定してランニングを「やらせる」こともあります。ただ、そればかりではよくなくて、選手自身が体の使い方を理解できるようにコーチがメニューを組んだり、方向性を指し示してあげると、自然と足は速くなりますし、何より選手自身が走ることに楽しみを覚えます。こうなると本数に執着せずとも、納得のいく走りができるまで選手が勝手に走るようになります。
先ほどの例えでいえば運転技術は自分の体をどう動かしていくのかというテクニックなので、これが理解できると、自分の足りない体力要素を自覚して補おうとします。そうなると、勝手に選手自身が走るようになりますね。ランニングも本数というよりは「できるようになること」が大切であると思います。

ーー実際の指導現場ではどのように選手たちへアプローチしていますか?
塚原 チーム全体でのトレーニングの際はうまく走っている選手をピックアップしてみんなの前で実際に走ってもらい、どういうところがいいと思うのかを見ている選手たちに考えてもらいます。反対に走り方にまだまだ改善の余地がある選手にも走ってもらい、先ほどの選手とどこが違っているのか、どうすれば速く走ることができるか、その場で皆で考えます。走っている選手からすると自分が思い描いている動作と、他人が客観的に見た動作にズレが生じていることを周りの選手からフィードバックされるので、自分の感覚と照らし合わせながらその場で動作を改善することができます。腕や足といった細かなパーツの動きを指摘するというよりは、自分の場合は「軽く走っているように見える」とか「動きがスムーズ」であるとか、動作を見て感じる印象を話すことが多いですね。生徒たちには「かっこいい走り方をしよう」と伝えています。なぜなら、かっこいい走りというのはバランスが取れていて、動きに無駄のない姿勢で走れているということだからです。


これまで経験したトレーニングをさらに深めていくことが重要

ーー塚原さんにとってトレーニング指導で大切にしていることを教えてください。
塚原 よく新しいトレーニングメニューやメソッドを要望される指導者やトレーナーさんがいらっしゃいますが、私はそうではなくて、選手たちが今までやったことのあるトレーニングを実際にやってもらい、「その動作は正しい?」というところから話をするようにしています。例えば腹筋や背筋、腕立て伏せなんてこれまでやったことがない人はいないでしょう。でも、腹筋や腕立て伏せの正しい姿勢ってわかりますか?説明できますか?多くの人が口では説明できないのではないでしょうか。「正しい動作」というのを多くの人はあまり意識をしないでトレーニングをしてしまっているのです。
トレーニングを間違ったフォームで積み重ねてしまうと「トレーニングでケガをしてしまう」という本末転倒な結果になりかねません。

速く走るという観点で見ても、「腕を振る」「腿を上げる」という言葉の意味だけではなく、なぜそうしたほうが速く走ることができるのかを理解することが大切で、そういった動きの中で1つでも2つでも新しい気づきをどんどん与えていく指導者になりたいですね。インストラクターであればエクササイズを「紹介」することが求められますが、我々のようなトレーナー、トレーニングコーチは「コーチング」として指導したことに対して見守っていく責任があります。単なる指導にとどまらず、選手にわかりやすく伝え、しっかりと理解してもらえるように導かなければならないですし、最終的には選手自身がセルフコーチとして自分でどれだけできるようになるかというところまでサポートしていく必要があります。当日のセミナーでも短い時間になりますが、1つでも2つでも「これならできそうだ」と思っていただけるヒントを提供していきたいと思います。


野球の現場で多くの選手たちに体の使い方を指導し、それを実際の技術と結びつけることでパフォーマンスアップをサポートしてきた塚原さん。Timely! Performance Labでは体の使い方や正しいトレーニングを通して今まで行ってきたものを再確認し、極めていくためのヒントをご提供いたします。

講師プロフィール

塚原謙太郎 1974年生まれ、東京都出身。東北福祉大〜日本生命と硬式野球を続け、社会人でも5年間プレーを続けたのち、トレーニングの専門学校へ入学しトレーナーの道へ。現在は花咲徳栄高校、健大高崎高校など高校野球部数校のトレーニングサポートや各種セミナーの講師を務めるなど幅広い活動を行っている。


プログラム内容

Timely! Performance Lab 第1回
明日から足が速くなる!走力アップにおけるスキル&トレーニング最前線

【1】秋本真吾氏「パフォーマンスにつながる効率的なスピードアップメソッド」
14:00-15:00 座学 
15:10-15:55 実技  
【2】塚原謙太郎氏「オフシーズンにおける走力アップの身体づくり」
16:10-16:55 座学
17:05-18:05 実技
【3】18:15-18:45 パネルディスカッション、質疑応答(コーディネーター:西村典子氏)

開催概要

日時:11/24(土)14:00〜18:45(13:30〜 受付開始)
場所:東京リゾート&スポーツ専門学校(東京都豊島区)
参加費:一般10,000円 学生8,000円

お席にまだ若干の余裕がございますので、お早めにお申し込みください


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