学校・チーム

【四條畷】「全力疾走」「全力発声」で持っている以上の力をだす

2017.9.4

集合する四條畷高校野球部の部員たち

「文武両道」を実践する、偏差値65以上の高校6校をタイムリー編集部が密着取材した『甲子園を目指せ!進学校野球部の勝利への方程式』(辰巳出版)が発売!

取材した高校の中から、今回は大阪府立四條畷高校の一部を紹介します。

”取材した6校の野球部には共通点があった。それは「人を育てる」教育をしているということ。「勉強」も「野球」も手を抜かないのは、そこに勝利の方程式があるから”(本書より)


人間教育で技術を向上させる。激戦区を勝ち抜くための指導とは

『甲子園を目指せ!進学校野球部の勝利への方程式』|四條畷高校編

[ 掲載内容 ]
「”畷校”の愛称で呼ばれる歴史ある街の伝統校」
「チームを率いる辻野監督のルーツとポリシー」
「寸暇を惜しんだ練習と全力疾走、全力発声」
「マネージャーまで徹底される”声”」
「自主性を重んじる野球部の運営」
「チームを支える攻守の柱」
「努力でレギュラーをつかみ取った選手の存在がプラスに」
「激選区大阪で勝ち進むには」
「絶体絶命の中で見せた選手たちの成長」
「チーム全員で繋ぐ野球ノート」

「寸暇を惜しんだ練習と全力疾走、全力発声」より

肝心の大会での結果はすぐについてきたわけではない。辻野監督が着任して最初の三年間は夏の大会は1勝も上げることができずに初戦敗退で終わっている。ただそれでも辻野監督の指導法はぶれることはなかった。安易に野球の技術を向上させるのではなく、人間的な成長を求め続け、そしてそれが着実なチーム力向上に繋がっていった。

「自分がここに来た時に入学してきた65期の選手たちは三年間夏に一度も勝てなかったんです。勝てないと選手の気持ちも離れていきやすいんですけど、それでも挨拶、礼儀を徹底してやれば必ず他校からも羨ましがられるようになって、選手も自信が持てるようになる。だからその時の選手には結果が出なくても我慢してやるべきことをやり続けようと言いました。勝てなくてもそういうチームを作り上げた結果が次の年(2013年)の夏のベスト16に繋がったのだと思います」

ようやく結果も出始めた畷高野球部だが、他の進学校と同様に練習時間が長くとれるわけではない。平日は15時20分に授業が終わり16時頃から練習がスタートするが、18時30分に完全下校と決められているためグラウンド整備や片付けの時間を考慮すると大体17時45分くらいには全体練習終了となる。また月曜日は1限多く授業があるためさらに時間が短くなり、土曜日も隔週で授業があり長時間の練習は難しい。グラウンドも他の部と共用であるため平日は内野しか使うことができないのだ。しかしそんな状況も決してマイナスにとらえるのではなく、その中でできることを徹底して行っている。

バッティング練習に取り組む四條畷高校野球部の部員たち

選手にお願いした事前のアンケートの回答にまずそれが感じられる部分があった。「こういうところを見てもらいたい、取材してほしいなどの要望」という項目に対して、多くの選手が「寸暇を惜しんで練習に取り組んでいるところ」と書いていたのだ。具体的には全体練習の時であっても、少しの時間が空くとその場でできるトレーニングをしたり素振りをしたりしている。その姿勢はグラウンド整備にも現れており、ただトンボをかけるのではなく低い姿勢で行うことでスクワットの動きに繋げているのだという。神奈川では横浜隼人高校の低い姿勢のトンボかけが有名だが、畷高のこの姿勢も府内ではよく知られており、そのスピーディーで見事な動きが注目され昨年の審判講習会ではグラウンド整備のモデル校として取り上げられている。これも寸暇を惜しんで少しでも上達しようとする姿勢が認められた結果と言えるだろう。

同じ項目に対する回答の中でもう一つ目立ったのが「全力疾走、全力発声」という言葉である。全力疾走は高校野球でおなじみのワードだが、全力発声という言葉はあまり聞いたことがない。ただ畷高の野球部を語るうえで〝声〟というのは欠かせないものになっている。実際に練習を見ていてまず圧倒されるのがその声量だ。取材を行った土曜日の午後は2年生が模擬試験を行っており、その妨げになるということで途中までは大きな声を出さずに練習していたが、校舎にいる生徒にまで影響が出るくらいのものだと思ってもらえれば想像がつくだろう。そして辻野監督はなぜ声を出すかということについても選手たちにしっかりと伝えるようにしている。

「挨拶の時にも話しましたが、ただ大きい声を出せばいいというものではなく、その目的を理解しないといけません。まず全力で大きな声を出し続けることで脳も身体も活性化しますよね。そうすることでプレーに対する集中力や練習の効果も変わってきます。あとは普段からしっかりした声かけをすることで、試合の大事な場面での指示も的確に伝えることができるようになります」
高校野球では部員が大きな声を出して練習している野球部は決して珍しいものではないが、このようにその意味合いをしっかり伝えられているチームは少ないのではないだろうか。単なる賑やかしの大声ではなく、プレーを考えて声を出す訓練を日々続けていることが試合の好結果に繋がっていることは明らかだろう。(文&写真:西尾典文)

続きは本書よりお読みください


●公立の進学校が、本気で甲子園を目指す!

今年の夏の甲子園も様々な話題で盛り上がりましたが、その中のひとつとして、公立校の出場が過去最少となったということがあります。
その中で進学校となると、さらに少なくなってきてしまうのが現状です。
しかし、「文武両道」を掲げ、本気で甲子園出場を目指す公立校が全国には多く存在しているのもまた事実なのです。

●選手たちはいかにして「文武両道」を実践しているのか?

本書では、そんな公立進学校6校の「甲子園出場」という大きな目標に向けた取り組みを紹介していきます。
いかにして選手たちは、学業と部活を両立させているのか? 少ない時間の中で、どのような練習を行っているのか?
そういった疑問に対する答えだけでなく、本書は選手たちの挫折と喜び、指導者たちの思い、そして未来への夢が詰まった一冊になっています。

●公立進学校の監督&選手たちの6つの軌跡を収録!

【掲載高校】
◎県立宇都宮高校(栃木)/勉強にも野球にも本気で打ち込めるか。将来のリーダー育成を掲げる伝統校の真実。
◎県立丸亀高校(香川)/甲子園を目指せる高校として成功体験を心に刻み集中する。
◎県立岡山城東高校(岡山)/目標設定、実行、見直し、改善。短時間練習の中で意識を徹底。
◎県立新潟高校(新潟)/優等生たちの意識を大きく変えたスパルタ“鬼"監督の情熱野球。
◎府立四條畷高校(大阪)/人間教育で技術を向上させる。激戦区を勝ち抜くための指導とは。
◎県立川和高校(神奈川)/髪型自由、SNS自由。スマホも取り入れる自主自立の練習法。

【編者プロフィール】

タイムリー編集部
2009年7月に創刊し発行を続ける、全国約4000校の高校野球部へ直接配布するフリーマガジン「Timely!」。株式会社SEA Globalが発行元となり、隔月年間5回の頻度であらゆる高校野球部を始め、現場を徹底的に取材した記事を掲載している。
また、誌面以外にもWEBサイト「Timely! WEB」にて、高校野球を中心とした記事も配信している。



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