明治神宮大会では慣れない環境でルーティンを崩してしまった池谷蒼大投手。女房役の森康太朗捕手もその事に気づいていたが声を掛けられずにいた。気持ちが不安定な状態ではいつものピッチングができず、チームの敗戦に繋がってしまうと感じた二人がルーティンについて話してくれた。
相思相愛バッテリー、神宮大会で気づいたルーティンの大切さ
真似から始めたルーティン
―二人とも普段から守っているルーティンはありますか?
池谷 僕は多いです。例えば、試合前にトレーナーさんから教わった柔軟運動のメニューをやります。下宿に帰ったら交代浴をして、寝る前にまたマッサージをして、湿布を貼って、マスクをして寝ます。
森 知ってはいたけど、やっぱり多いね(笑)。
池谷 マスクは秋の中部地区大会から始めたんですけど、試合に勝てるようになったので、ずっと続けています。
森 僕は池谷ほど多くないけど、試合前の流れはいつも一緒です。着替えのタイミングも順番もいつも同じ。ユニフォーム着て、スパイクを履いて、防具を足から順に上へ装着していきます。あと、ミズノの長袖のアンダーシャツは鉄板。手汗をすごくかく体質だから、汗が落ちてこないように1年中試合では長袖です。
―ちなみにルーティンを始めようと思ったきっかけは?
森 監督が2つ年上の堀内謙吾先輩(東北楽天ゴールデンイーグルス)はいつも同じルーティンをしていたぞ、と話してくれたのがきっかけですね。自分の憧れの人なので、最初は真似をしてみようって思いました。そこから、自然と癖みたいになりましたね。
池谷 一つでも抜けちゃうとなんか気持ち悪くなっちゃうよね。僕もきっかけはイチロー選手や、ラグビーの五郎丸選手は決められた時間やタイミングに同じことをしていると知ったので、真似してみようと思い始めました。
―ルーティンを取り入れることのメリットって何でしょうか?
池谷 身体の状態というのは体調によって変わるけれど、気持ちの部分は常に同じにしないといけないと思います。ルーティンをすることで、心だけでもいつも同じ状態でグラウンドに立てると思いますね。
森 気持ちの部分だけでも、試合に入る状況が変わらないのは大きいよね。それに、試合前とか余計なことを考えなくて済むようになりますね。
池谷 それで思い出すのが去年の秋の神宮大会。早稲田実業との試合前日は遠征先の部屋が落ち着かなくて、交代浴や湿布を貼って寝ることができなかった。なんか気持ちが浮いたまま、試合に臨んじゃったなって後悔しました。
森 同じ部屋だったから僕も気づいていたんですよ。今まで見たことないくらい緊張していたよね。でも、僕はすぐ寝ちゃって…(笑)
―チームでやっているルーティンがあると聞きましたが。
森 試合中に伝令係が来て、話を聞いた後にマウンドで「せーのっ」て掛け声をしてみんなで軽くジャンプします。これは静岡の伝統でずっと受け継がれていますね。みんなが一つになり、心が落ち着きますよ。
池谷 あと、なんで始めたのかわからないけど、僕は投球練習が終わったらセンターの選手と互いに指を指し合っています。これはなにがきっかけで始めたのかさっぱり思い出せない(笑)。
森 チームでは野球日誌をつけています。自主練習が終わって、家に帰る前の10分間くらいですかね。そのときの体調だったり、その日に感じたことを書いています。
―バッテリーだからわかるお互いの性格を教えてください。
池谷 森は色んな角度で物事が見られる人間。ミーティングでも目線を変えた発言をしてすごいなって思います。ただ、性格的には少し冷たいかな(笑)。
森 そうかなあ。池谷はマウンドでは繊細で、野球を離れると豪快な感じだね。
池谷 確かにそうかも。というか、クラスも同じだし、ほとんど一緒にいるね。
森 言いたいことを全部言える仲です。
池谷 たまに愚痴なんかも(笑)。
―仲の良さが伝わります。では、最後に夏に向けて一言。
森 全国で勝つということを目標にしているので、夏こそはチーム全員で日本一になりたいですね。
池谷 僕も同じです。選抜は自分の不甲斐ないピッチングで負けたので、最後の夏の大会は、レベルアップした姿を甲子園で見せたいと思います。