チームとしての「基準作り」とは?
取材当日、繰り返し練習していたのがランナー一・三塁/二・三塁/一・二塁の3つのケースの攻防。ゴロ、ヒット、フライに対して攻撃側、守備側がどのような対応をしていくのかを確認していた。
特徴的なのは、一・二塁にいくつかのミニコーンが置いてあったことだ。
「ランナーが打球を判断するための基準です。どこに打球が飛んだときに、どこまで出られるか。チームの約束事として、徹底しています」
基準となるのが3つのコーン。塁間の中間地点にある「ハーフウェイ」と、4分の1地点にある「クォーターウェイ」。クォーターウェイは一塁ベース側、二塁ベース側の2つが存在する。例えば、ノーアウト一塁でレフト後方へのフライが上がったとしよう。一塁ランナーは二塁ベースのクォーターウェイまで出て、打球を判断する。
チームとしての基準を明確に設けることで、全員が同じ目的を持って練習に取り組むことができるのだ。
親に頼らず、自立する選手を育てる
秀光中の選手たちから感じるのは「大人っぽさ」だ。監督が指示を出さなくても、選手だけで練習が進んでいく。そしてミーティングまで開かれる。どうすればこのような選手に育つのだろうか。
「実年齢と同じままの精神年齢では、日本一になれないと思っています。そのためには、いかに親に頼らずに、自分たちでやれることをやっていくか。たとえば遠征に行くときにインターネットなどで近くにあるコインランドリーを調べたりすることはできますよね。中学生でもできることはたくさんあるんです」
日常であれば、ユニフォームの洗濯や弁当箱を洗うこともそう。自分でできることは自分でやる。それが自立へとつながっていくのだ。
学生コーチを兼任する齋藤くんに聞く、チームを引っ張るコツ
学生コーチ兼選手として、チームを支える齋藤くん。昨夏、新チームが始まるときに自ら学生コーチに名乗り出た。
「一つ上の小野寺翔さんへの憧れがありました。練習メニューまで決めていて、みんなからの信頼が厚い。人との接し方も尊敬できて、小野寺さんみたいになりたいと思ったのがきっかけです」
ミーティングの中心にはいつも齋藤くんがいる。キャプテンとともにチームをまとめ、引っ張る立場だ。「気をつけているのは、全員の意見を聞くことです。学生コーチになった当初は自分が思ったことだけをやっていたんですけど、周りの意見を聞くことで新しい考えが生まれ、いい方向に進んでいくということを実感しています」
仙台育英秀光中野球部学生コーチ・小野寺翔くん
同級生が仙台育英高校の硬式野球部に進む中、小野寺くんは学生コーチとして中学の野球部を支える決断をした。
「自分が支えた仲間が試合で活躍したときのうれしさを知りました。そのうれしさに惹かれて、高校でも中学の学生コーチをやろうと思いました。将来的には、教師になって野球部の指導者になりたいと思っています」
中学時代、小野寺くんの学年は須江監督から「まとまっていない」と怒られることが多かったという。そこで選手達の発案で取り組んだのが、3年生だけの交換日記。一人一人に対していいところと改善点を書く。書かれた方は「もっとこうしたらよくなるんだ」と受け入れる。この関係性がでてきてから、同学年の仲が深まり、互いの想いを言い合えるようになったという。
<監督プロフィール>
須江航(すえわたる)・・・1983年生まれ、埼玉県出身。仙台育英高校〜八戸大学。高校時代は学生コーチとして2001年センバツ準優勝に貢献。大学卒業後、秀光中の監督に就き、就任9年目を迎えた。
<学校プロフィール>
私立仙台育英学園秀光中等教育学校(宮城県)・・・高校野球の強豪・仙台育英高校の系列校。
全国中学校軟式野球大会に4度出場、2014年には見事初優勝を飾る。全日本少年春季軟式野球大会には1度出場。