話す相手には、5W”2″Hの思考で具体的に伝える
グラウンドでの取材中、前島監督と選手の間でこんな印象的なやり取りがあった。
写真を撮るために集まっていた選手たち。しかし、すぐには全員集まれず、グラウンドに遅れてくる1年生がいた。3年生が「走れ!」と声をかけると前島監督が「なぜ?主語は?理由を言わないと1年生は分からないんじゃないの?」と言葉を返した。
3年生は「カメラマンさんが写真を撮ってくれるから急げ!」と言い直した。確かに明らかに後者の方が相手に意図が伝わりやすい。
「物事を伝えるときや考えるときには、5W2Hの思考をもっていてほしいんです・5Wは『いつ・どこで・誰が・何を・なぜ』。2Hは『どのような方法で・どれぐらいの時間で』ですね」
例えば、できないプレーがあったとする。どのような練習をすればいいのかまでは考えられる選手はいても、「どれぐらいの時間があれば、成し遂げられるか」まで考えている中学生は少ないのではないか。前島監督はそう考えている。
「5W2Hを自ら考案し、周囲に伝える力を持っている選手は成長するスピードが格段に早い傾向にあります。自分の成長戦略を練ることができている証。この戦略をノートやレポートで言葉にすることで、自分の考えを表現することにつながっていきますから」
グラウンドでの練習とともに、前島監督が重視しているのが、野球ノートやレポートを書くことだ。大会が終わるごとに書くのが目標設定用紙。次の大会に向けての課題・問題点などを言葉にして表現し、検証する。
「こんなのものありますよ」と教えてくれたのが『オープンウインドウ64』。真ん中にテーマを記し、それに関わるキーワードを書き出していく。前島監督自身も書き入れ、選手達に配布することで「監督はこんなことを考えているんだよ」と伝えられるという。監督と選手が想いを共有することで、一つの方向に進んでいくことができる有効なツールである。
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