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【桐蔭学園】多彩な引き出しを持つ大川監督ならではのバッティング練習

2017.2.1

春夏合計11回の甲子園出場を誇り、神奈川屈指の名門である桐蔭学園野球部。近年は横浜、東海大相模の二強の後塵を拝することが多いが、鈴木大地(ロッテ)、茂木栄五郎(楽天)をはじめ、プロや社会人にも多く選手を輩出し続けている。そんな選手たちが育つ土壌を探るべく、1月の練習を取材した。

選手達にバッティング指導する桐蔭学園野球部・大川監督


◆目次◆
監督は中学野球界の名将
椅子に座ったまま投げたボールを打つ練習!?
まずは打ちやすいボールを打つことから

監督は中学野球界の名将


桐蔭学園野球部を指導する大川和正監督は長く桐蔭学園中学の監督を務め、全日本少年軟式野球大会で2度の優勝を果たした中学野球界の名将だ。2013年秋に高校の監督に就任したが、まず驚いたのは選手の故障の多さだったという。

「うちはシニアやボーイズ出身の選手が多く、体も大きいんですけど少し追い込むと故障する子が本当に多いです。でもよく考えてみればシニアやボーイズでは集中して野球の練習をするのが週末の二日だけというチームが大半ですから、当然と言えば当然なのかもしれません。だから平日は選手が満腹になり過ぎずに、自分達でもっとやりたいと思えるようにしています。寮の門限もありますから全体練習は夕方4時から7時の3時間くらい。全体練習が終わって門限の9時15分までは自主練習の時間にしています。準備やアップの時間も考えると本当に短いですから、テーマを絞って一つのことに集中してやるようにしています」

椅子に座ったまま投げたボールを打つ練習!?


取材当日は平日の木曜日。この日に集中して取り組んだのはバッティング。中学の監督時代には「桐蔭学園大川式バッティング向上メソッド(ベースボールマガジン社)」という指導書も出版している大川監督。バッティング指導には多くの引き出しを持っているが、現在のチームでこの時期に取り組んでいるのはまずしっかりとした自分の形で強くボールをとらえるというシンプルなものだった。

練習で設置された打席は5か所。一番右から投手、左投手のカーブマシン、ストレートのマシン、右投手のカーブマシン、ティースタンドという内容だが、まず目を引いたのが一番右の投手。投げる選手は打者に正対して椅子に座ったままボールを投げているのだ。

当然速いボールが投げられるわけはなく、打者は緩いボールを鋭く弾き返していた。そして一番左のティースタンドの打撃もただ打つだけではなく、ショートの後方に置かれたネットを目標に打っているという。この二つの練習については明確な狙いがあるそうだ。

「素振りの延長でボールを実際に打つ、という意味でこの二つはやっています。置いてあるボールを狙ったところに打つことでポイントが確認する。次に座った選手が投げているのはとにかく前から飛んでくるボールを打つことに意味があります。斜めからトスされたボールはやっぱり軌道が違いますから。置いてあるボール、緩いボールを自分の打ちたい形で打つ、まずそれがしっかりできるようになることが狙いですね」

まずは打ちやすいボールを打つことから

真ん中の三つのマシンも緩いカーブと決して速くはないストレートに設定されており、ここでも打者は鋭い打球を繰り返し放っていた。

ちなみに選手が練習で使っているのは木製バットだが、重量は極端に重いものではない。比較的打ちやすいボールを重くない木のバットで打つ、というところが現在行っている打撃練習のポイントだという。
「バッティングは最終的には対応動作だと思いますが、その前段階としてこの時期はとにかくきちんとした形で強く正確にミートすることを重視してこの形にしています。金属バットだとどうしても力に頼ってしまう。そして力をつけようとして重いバットで振ると、本来のスイングではなく重い物を振る動作になる。実際の動きと変わってくると思うんですよね。また木のバットで速いボールや鋭い変化球を打つと芯で外した時の怖さでまた形が崩れてしまう。そういうこともあって、今年のチームはまず普通の重さの木のバットで打ちやすいボールを打つことから初めて形を作って、2月、3月と実戦が近づいてきたら金属にしてボールも変えて、というステップで考えています」(取材・文・写真:西尾典文)

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