バッティングはバットを握ってスイング動作を繰り返し行うものですが、ボールが当たったインパクトの瞬間は大きな衝撃が手に加わります。手の付け根には手根骨と呼ばれる積み木のような8つの小さな骨があり、中でも手のひらの小指側に位置する有鉤骨(ゆうこうこつ)は特にスポーツ傷害が起きやすいといわれています。これは有鉤骨という名前のとおり、勾玉(まがたま)のように鉤(かぎ:フック)を持った特殊な形をしており、大きな衝撃によって突起の部分が折れやすいことが考えられます。野球のバッティング動作、ゴルフやテニスのスイング動作などでよく見られ、痛みとともにしびれ感などを伴うこともあります。
バッティングでいわゆる「つまった」時、手のひらに大きな衝撃が加わってジンジンと痛くなることがあります。一時的なものであればしばらく様子をみるようにしますが、痛みが継続的に続く、痛みがどんどん増していくといった場合は、骨折していないかどうかを確認するためにも医療機関を受診するようにしましょう。有鉤骨の位置は小指・薬指付近の手のひら側ですが、手の甲側に痛みを訴える選手も少なくないため、小指・薬指の手根骨付近に痛みを感じるときはまず有鉤骨が骨折していないかを確認しましょう。病院で検査(CT・MRI等)を受けるとほぼ見つかりますが、まれに撮影角度によっては見落とされるケースもあります。痛みが長期にわたって続く場合、痛みでバッティング動作ができないといった場合は再度検査を受けるようにしましょう。
通常の骨折であれば、骨折した部分を整復・固定し、骨が癒合する(いわゆる骨がつく状態)のを待ちますが、有鉤骨の骨折の場合は折れた鉤の部分を取り除く手術を行うことがほとんどです。まれにギプス固定で骨が癒合するのを待つ保存療法を選択することがありますが、同じ動作を繰り返すことで再発する可能性があるため、手術を勧められることが多いでしょう。ちなみにバッティング動作で負傷した中日・高橋選手は骨片摘出手術を受けており、
打球が当たって負傷したヤクルト小川投手の場合は、同じ動作(バッティング動作)の繰り返しによるものではないため、保存療法を選択して競技復帰しています。競技復帰にはリハビリテーションなどを経ておよそ6~12週間程度かかるといわれていますが、個人差がありますので、復帰時期については実際に診察を行った医師に確認をしましょう。