トレーニング

野球の動作において重要な「目線」を意識してみよう

2016.2.1


野球にはさまざまな体力要素や技術が求められますが、その中でも自分の体をコントロールし、適切な動作をもたらす重要な要因の一つが「目線」です。野球に限らずスポーツの多くは視覚からの情報を脳で認知し、その後の動作を決定します。今回は「目線」がどのようにパフォーマンスアップに貢献するのかについて、バッター、ランナー、野手からの「目線」で考えてみましょう。


▶守備

低い姿勢で捕球する意味を考える

 低い姿勢で捕球をするために、股関節付近を入念にストレッチしたり、相撲の四股踏み、股割りといった動きを取り入れてトレーニングをするチームや選手は多いと思います。
 内野の守備では帽子の上にある「天ボタン」を前に見せないように(前屈みにならない)、目線を低くして捕球体勢を取りますが、これは股関節を十分に使って低い位置を保ち、捕球ミスを少なくするための基本姿勢です。「天ボタン」を前に見せてしまう姿勢は、目線を下に下げることで腰が浮いてしまい、トンネルなどの捕球ミスやグラブにボールがぶつかってキチンと捕球できないといったミスにつながります。また腰が浮いてしまうと捕球後に上体が起き上がってしまうため、スムーズな送球動作に移ることがむずかしくなります(悪送球が増える)。さらに目線を下にしてしまうと、イレギュラーバウンドへの対応が遅れてしまうほか、ボールに対する恐怖心も大きくなってしまいます。

POINT
帽子の「天ボタン」を前に見せないこと=低い姿勢で目線を水平に保つことは、捕球ミスを少なくするだけではなく、送球という次の動作の安定性に不可欠なので、意識してプレーしましょう。


▶バッティング

体の軸を安定させて打ちたい

 スポーツと脳との関係について数多くの著書をもつ脳神経外科医・林成之先生によると、人間には「空間認知脳」という知能で物を見る仕組みになっているため、目からの情報は非常に重要になってくるとのこと。バッティングのときに体の軸がぶれたりずれたりしてしまうと、思ったようなスイングができませんよね。体の軸をまっすぐに保つことは、目線を水平にし、正確な物の認知、素早い判断へとつながります。逆に体の軸がぶれた状態では目から入ってくる情報が傾き、脳内でバランス補正をしなければなりません。
 こうしたほんの少しの補正時間は、体を動かすタイミングを微妙に遅らせることになり、タイミングよく打ち返したつもりなのに打ち損じになってしまった……ということが起こりやすくなります。また体の軸がぶれてるとスイングの軌道が自分の思っているものとずれてしまうため、スイングしても芯に当たらないということも起こってしまうのです。

POINT
①バッターボックスに入るときは左右の目でしっかりとピッチャー方向を見ること、②その際に目線を水平にする意識をしっかり持つこと、③打つときに体の軸がぶれないように、日頃から練習やトレーニングなどで強化することなどを心がけましょう。普段の歩いている姿勢から目線を水平にすることを意識し、野球のパフォーマンスアップにつなげましょう。


▶走塁

目線は水平、腰を低くしてスタート

 ランナーとして塁上にいるときも、一番重要になるのは目からの情報です。ピッチャーのフォームをチェックし、牽制がないかどうかを瞬時に判断し、投球と同時に第二リードをしっかりとって、一つでも先の塁を狙いたいというのはランナーの基本動作です。
 ランナーの場合、目線が水平であることは視界を正確に認知し、身体のバランスをしっかりと保つことにつながります。さらに低く構えた姿勢をとり、目線を一定にすることは、スタートを切ったときに身体がフワッと浮き上がることを抑制し、スピードロスを防ぐことにもなります。スタートを切って走っていると、身体は次第に低い位置から起き上がってしまいますが、身体が起き上がってしまえばその分空気抵抗は大きくなります。
 日頃のランニング練習でスタートを意識する際には、音の刺激だけではなく目からの合図でダッシュするようにすることもオススメです。

POINT
目線を低い位置で水平に保つことは、空気抵抗の影響をなるべく少なくして、できる限り速く走るという走塁には欠かせないものなのです。




東海大学硬式野球部
アスレティックトレーナー
西村典子
日本体育協会公認アスレティックトレーナー。
主に大学・高校野球でのスポーツ傷害予防、
応急処置、フィジカルトレーニングなどを指導



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